最新記事

日本社会

自殺未遂の割合は20代女性が突出して高い

2020年4月1日(水)13時45分
舞田敏彦(教育社会学者)

なお自損行為搬送人員(≒自殺未遂者)の属性を見ると、自殺者とは違った傾向が見られる。2018年の東京都の自損行為搬送人員は3608人だが、このうち2315人(64.2%)は女性だ。自殺者の性比(男2:女1)と逆になっている。<図2>から、年齢構成も違うことが分かる。

data200401-chart02.png

自殺者は高齢層が多く、50歳以上が全体の6割近くを占める。この層に自殺対策の重点が置かれる所以だ。しかし自損行為搬送人員では、20代が26.3%と突き抜けている。こちらは、30代までの若年層が全体の半分を占めている。

自殺者では「男性・高齢層」が多いが、自損行為搬送人員(未遂者)は「女性・若年層」が多い。後者を見落とすと、対策の的を外すことになる。近年、子ども・若者の自殺率だけが上昇(高止まり)の傾向にあることから、対策の重点をこちらに移すべきだ(拙稿「日本の子どもの自殺率が2010年以降、急上昇している」本サイト、2019年3月13日)。

ネットやスマホが普及した現在では、生活態度を不安定化させた子どもは、自殺勧誘サイトの類に簡単にアクセスできてしまう。こうした有害情報よりも、相談・支援の情報が目につくようにしなければならない。SNSの検索欄に「自殺」と入力すると、トップに相談機関の連絡先が表示されるようになっているのは、対策が講じられた結果だろう。

子どもの生活態度を不安定化させる要因としては、親の叱責や学業不振といったものが大きい(拙稿、前掲)。コロナの影響で親子ともに在宅する時間が増えているが、不安やストレスのあまり、養育態度の歪み(厳格、過干渉など)が起きないよう注意することも必要だ。

<資料:警察庁『自殺の状況』
    消防庁『消防白書』
    東京消防庁『東京都消防統計』

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英、既存石油・ガス田での新規採掘を条件付き許可へ 

ビジネス

中国工業部門利益、10月は5.5%減 3カ月ぶりマ

ワールド

暗号資産企業の株式トークン販売巡る米SECの緩和措

ビジネス

米ホワイトハウス付近で銃撃、州兵2人重体 容疑者は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中