最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナ:「医療崩壊」ヨーロッパの教訓からいま日本が学ぶべきこと

Lessons from the European Lockdown

2020年3月29日(日)13時30分
國井修(グローバルファンド〔世界エイズ・結核・マラリア対策基金〕戦略投資効果局長)

mag20200407kuniiuk.jpg

3月27日、イギリスのジョンソン首相の感染が確認された ANDREW PARSONSーREUTERS

これらに対して、イギリスは当初異なる対策を示した。3月12日に行ったボリス・ジョンソン首相の会見は、具体策として持続する咳や発熱がある場合は7日間自宅隔離することを伝えただけで、今のところ学校は閉鎖しない、大規模イベントも禁止しない、欧州からの渡航制限もしないというものだった。

しかし、翌日の13日には一転して500人以上の集会禁止の方針を伝え、16日にはパブやレストラン、劇場などを避けるよう求め、高齢者や妊婦、基礎疾患のある人などは外部との接触を断つことを要請した。17日には不要不急の海外渡航を避けるよう勧告し、20日には学校を閉鎖、23日には必要不可欠な活動以外の外出を禁止し、運動のための外出は1日1回と制限された。

一緒に暮らしていない2人を超える集まりは禁止され、必需品を扱わない店舗の閉鎖も命じられた。守らない場合は罰金の対象になる。ちなみに3月26日現在のイギリスの感染者数は9533人、死者数は日本の10倍以上の463人で、首相会見の3月12日から26日までに死者数は70倍以上増加した(ジョンソンも27日に感染が確認された)。

なぜ英国首相は当初あのような発言をし、1日で撤回したのだろうか。まず、当初のスピーチは同席していた英政府のパトリック・バランス首席科学顧問とクリス・ウィッティー首席医務官など専門家の意見を反映している。

彼らの分析によると、イギリスの感染流行はまだ初期段階で、感染者は次の4週間に急増し10~14週後にピークを迎える。そのため、現時点で厳しい行動制限を導入すると感染流行が最高潮に達した頃に自粛疲れが生じる危険性があると判断した。

また、大規模集会の禁止や学校閉鎖などの効果はエビデンス(科学的根拠)がないため、むしろ強行することによる負の影響を考慮した。手洗いや、症状が表れた場合の自主隔離の実践だけでも、流行ピーク時の感染者数を2割減らせるとのエビデンスも考慮し、戦略を練ったのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中