最新記事

治療法

新型コロナ感染症と戦って勝つ免疫細胞を発見

Scientists Find How Body Fights COVID-19 by Monitoring Coronavirus Patient

2020年3月18日(水)18時30分
カシュミラ・ガンダー

患者の血液に表れたのは、インフルエンザが治るときと同じ免疫細胞だった Yves Herman-REUTERS

<新型コロナウイルスと人間の免疫システムが戦う様子が、初めて捉えられた>

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が回復するまでの過程を追った研究が、新型コロナウイルスに対するワクチンや治療法の確立に一歩近づくステップになるのではと期待されている。

研究チームは、新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」に対し、4種類の免疫細胞が素早く反応することを突き止めた(SARS-CoV-2は、感染症「COVID-19」を引き起こすウイルスの名前)。患者の身体も、インフルエンザと戦うときと似た方法で新型コロナウイルスを攻撃しているように見えたと、学術誌「ネイチャー・メディシン」に掲載された論文は書いている。

研究対象となったのは、新型コロナウイルスが最初に発生した中国の武漢市出身の47歳の女性。この女性は、オーストラリアのメルボルンにある病院の救急医療部に来院した際、「軽度から中程度の新型コロナウイルス感染症」の症状を示していたと、研究チームは説明している。

回復を予測できた

この女性は、病院を訪れる11日前に武漢からオーストラリアに来たが、パンデミック(世界的大流行)発生との関連性が指摘されている武漢の海鮮市場や感染患者との接触は確認されていない。救急医療部を訪れる4日前から、倦怠感、喉の痛み、空咳、胸の痛み、息苦しさ、発熱といったCOVID-19の複数症状が現れたという。

診察の結果、女性には38.5度の熱があり、その後の検査により、SARS-CoV-2に感染していることが確認された。だが7日後に再び検査をしたところ、もはやウイルスの陽性反応は認められず、11日目には退院。13日目までに、症状は完全に消えた。

回復前と回復後に採取した血液を調べると、女性の身体は、初めて出会うこのウイルスに対して、複数の手段で攻撃を仕掛けていたことが判明した。

論文の共著者で、メルボルン大学微生物学・免疫学科の教授であり、ピーター・ドハーティ感染免疫研究所に所属するキャサリン・ケジルスカはBBCニュースの取材に対し、症状がおさまり始める3日前から、血液中にインフルエンザの患者でも回復の3日前に現れる特定の免疫細胞の存在が認められた、と語った。「インフルエンザの患者での経験をもとに、回復を予測できるのではと考えたが、まさにそうなった」

<参考記事>新型コロナウイルスの「0号患者」を探せ!
<参考記事>塩野義製薬、新型コロナウイルス検査キット販売に向け提携 10分で結果判明

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中