最新記事

東南アジア

インドネシア、新型コロナウイルスの影でパプア独立武装組織と交戦 女性ら4人死亡

2020年3月17日(火)20時40分
大塚智彦(PanAsiaNews)

パプア独立を要求する武装勢力が国軍・警察の合同部隊を襲撃した。 KOMPASTV / YouTube

<国民の目が新たな脅威に向けられている間に、独立運動家への締め付けが強化されている>

インドネシアからの独立を求める武装組織が小規模ながら長年にわたって治安部隊と衝突を繰り返しているインドネシア東端のパプア地方で、3月に入って再び銃撃戦があり、独立組織の4人が殺害される事件が起きたことがわかった。

これは3月16日にAFPがパプア州ティミカ発で伝えたもので、米ニューヨークタイムズが報じた。パプア地方は治安状況不安定を理由にインドネシア政府、治安当局が外国メディアを含めたマスコミの自由な取材を許可していないため、情報の裏付けが困難な場合が多いのが実情で、インドネシアのマスコミではほとんど報じられていない。

AFPによると3月16日にパプア州ミミカ県カリブア村で独立組織「自由パプア運動(OPM)」の分派である「西パプア民族解放軍(TPNPB)」とみられるメンバーと、国軍と警察の合同部隊の間で銃撃戦が発生。軍はTPNPB側の女性1人を含む4人の死亡を確認したという。

治安部隊はその後現場から多数の武器を押収。斧や弓矢といった伝統的な武器に交じって突撃ライフルも複数あり、これは調査の結果2012年から2014年にかけて同県などで警察署が襲撃を受けた際に奪われたライフルである可能性が極めて高いと現地の軍報道官はしている。

現場は世界有数の鉱山開発地域

今回衝突が伝えられたカリブア村は世界有数の金銅鉱山として知られるグラスベルク鉱山に近く、米鉱山会社とインドネシアの鉱山開発会社による大規模事業が続くこの地域では、これまでもTPNPBやOPMのメンバーによる襲撃事件が頻発していた。

2018年12月には山岳地帯の国道建設現場で働いていたい建設労働者19人が殺害される事件があったが、治安当局は襲撃はTPNPBのメンバーよるものとみている。

グラスベルク鉱山付近のタンバガプラ村では2月29日から小規模な衝突が繰り返され、治安要員2人が死亡し、3人が負傷する事件も起きている。

この衝突以来、同地域の治安状況が急激に悪化したことを受けてティト・カルナファン内相は3月10日に現地治安当局に対策強化を指示した。そのうえで「国軍司令官と国家警察長官に対し、パプアでの治安維持に部隊の増強、派遣が必要ならばそのように要求してほしい。国家が武装した犯罪組織に屈服する訳にはいかない。法を犯す集団には断固とした姿勢で対処する」との強硬姿勢を地元「テンポ誌」などに対して明らかにした。

そうした中で今回再び銃撃戦が発生したことで、現地ではさらに緊張が高まることも予想されている。

政府部内で統治新法の検討進む

インドネシア政府部内では現在、パプア地方(パプア州と西パプア州)の統治に関する新法の制定準備に入っている。これは現在の「パプア特別自治基金法」が2021年11月に期限切れを迎えるためで、新法は主に中央政府とパプア地方の州政府との間の財政支援に関するもので、新法では中央政府が地方への統治力、影響力をさらに強めることで独立運動などを抑えこむ意向だとされている。

マフド調整相(政治法務治安担当)は3月11日に「政府が投入する資金の使途を明確にし、地方政府の支出を指導監督、モニターすることで関係強化を図りたい」と新法の目的を説明した。

ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏3月CPI速報、前年比+0.7%に鈍化 デ

ビジネス

MUFG、ダナモンやアユタヤ銀株などで減損3600

ワールド

日本の緊急事態宣言、欧米のロックダウンと異なる=西

ビジネス

GDPギャップ20兆円に拡大の可能性=諮問会議で民

MAGAZINE

特集:コロナ危機後の世界経済

2020-4・ 7号(3/31発売)

感染拡大で経済先進国の序列と秩序はこう変わる── コロナ後の「ニュー・エコノミー」を識者が徹底解説

人気ランキング

  • 1

    ドイツ政府「アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要なのだ」大規模支援

  • 2

    「コロナ失業」のリスクが最も高い業種は?

  • 3

    「緊急事態宣言、4月1日に出すという事実ない」 菅官房長官、ネット上の噂を否定

  • 4

    食肉市場に出回るペット 出荷前には無理やり泥水を…

  • 5

    新型コロナ、若者ばかりが責められて「中高年」の問…

  • 6

    コロナ禍のアメリカでひよこがバカ売れ

  • 7

    日本で新型コロナの死亡率が低いのは、なぜなのか?

  • 8

    新型コロナ:「医療崩壊」ヨーロッパの教訓からいま…

  • 9

    ペットに共食いさせても懲りない飼い主──凄惨な退去…

  • 10

    緊急公開:人類と感染症、闘いと共存の歴史(全文)

  • 1

    ドイツ政府「アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要なのだ」大規模支援

  • 2

    日本で新型コロナの死亡率が低いのは、なぜなのか?

  • 3

    「コロナ失業」のリスクが最も高い業種は?

  • 4

    韓国激震 常軌を逸した極悪わいせつ動画SNS「N番ル…

  • 5

    「緊急事態宣言、4月1日に出すという事実ない」 菅官…

  • 6

    日本が新型肺炎に強かった理由

  • 7

    食肉市場に出回るペット 出荷前には無理やり泥水を…

  • 8

    囚人コーチが教える最強の部屋トレ 自重力トレーニ…

  • 9

    新型肺炎で泣き面の中国を今度はバッタが襲う

  • 10

    新型コロナ対策、「日本式」の特徴と評価

  • 1

    一斉休校でわかった日本人のレベルの低さ

  • 2

    日本が新型肺炎に強かった理由

  • 3

    韓国はなぜ日本の入国制限に猛反発したのか

  • 4

    フランスから見ると驚愕の域、日本の鉄道のあり得な…

  • 5

    新型コロナショック対策:消費税減税も現金給付も100…

  • 6

    「NO JAPAN」に揺れた韓国へ「股」をかけて活躍した日…

  • 7

    やっぱり日本は終わりだ

  • 8

    ついに日本は終わった

  • 9

    豪でトイレットペーパーめぐって乱闘 英・独のスー…

  • 10

    新型コロナウイルス、感染ショックの後に日本を襲う4…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月