最新記事

日本社会

新型コロナは日本の社会変革をうながす「黒船」なのか

2020年3月11日(水)16時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

色が濃いエリアでは、子どもへの感染にも気を付けたほうがいい。子どもは家庭内において新型コロナに感染する例が多いというが(日本小児科学会)、満員電車で長時間揉まれて帰ってきた親と接したら、感染のリスクは高くなる。

自宅やサテライトオフィスでのテレワークを認める会社も出てきているが、テレワークができる職業(管理職、専門技術職、事務職)は全体の3割ほどで、残りの人はそれが不可能な現業職だ。どうしても出勤が必要で、その時間帯も集中してしまっている。

data200311-chart02.png

<図2>によると、有業者の3人に1人は7時台に家を出ており、8時台までを含めると6割にもなる。大半の会社が始業時間を9時に設定しているためだ。帰宅時間は18時台への集中度が高い。通勤電車が混雑するわけだ。

役所ならいざ知らず、全ての事業所が「9時~17時」の定型にこだわる必要はない。新型コロナのために、時差出勤を取り入れる会社が増えており、3月2日~4日の山手線の朝の混雑率は以前より2割減ったという(国土交通省)。こうした取り組みをもっと進めていきたい。

感染症防止のためとなると、国や企業は従来のやり方からの変革に本腰を入れざるを得ない。変化は実際に起きており、テレワーク、時差通勤、オンライン授業、オンライン会議、遠隔医療といったテーマに関する報道が、この1カ月間で激的に増えている。掛け声だけで終わっていたものが、着実に実行されつつある。新型コロナは社会変革を促す「黒船」だとも言えるだろう。

ここで提示した2つのグラフの模様も、近い将来には大きく変わっているのではないか。

<資料:総務省『住宅土地統計』(2018年)
    総務省『社会生活基本調査』(2016年)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン氏、建設労組の支持獲得 再選へ追い風

ビジネス

米耐久財コア受注、3月は0.2%増 第1四半期の設

ワールド

ロシア経済、悲観シナリオでは失速・ルーブル急落も=

ビジネス

ボーイング、7四半期ぶり減収 737事故の影響重し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 2

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 3

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」の理由...関係者も見落とした「冷徹な市場のルール」

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 6

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    コロナ禍と東京五輪を挟んだ6年ぶりの訪問で、「新し…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中