最新記事

新型肺炎

新型コロナウイルスがアベノミクスの息の根を止める

Japan’s Economy May Be Another Coronavirus Casualty

2020年3月2日(月)19時00分
ウィリアム・スポサト(ジャーナリスト)

こうした状況から、安倍首相の支持率は大幅に下落している。2月15〜16日に行われた共同通信の調査によると、すでに多くのスキャンダルに見舞われている安倍首相の支持率は、この2年で最大の下げ幅を記録していた。安倍内閣の支持率は現在41%で、1月に行われた前回調査から8.3ポイント減少した。調査対象者のうち、82.5%がコロナウイルス感染拡大による経済への悪影響を懸念していると答えた。

これは日本の政治によくみられるパターンだ。日本人はチームワークが得意で厳しい局面を乗り切る力があるというイメージがあるが、日本の有権者はたいてい、問題が起きるとリーダーを非難する。

安倍首相がそれを体験したのは、記録的な豪雨で広範な洪水と地滑りが発生し、200人以上が死亡した2018年の夏だった。対応が手ぬるいという印象から、安倍政権の不支持率は46%まで上がり、政府の全体的な支持率は7ポイント下がって45%になった。

もっと劇的だったのは、長年野党だった民主党のケースだ。東日本大震災が発生した2011年3月に政権与党だった民主党は、地震および津波被害、原子力発電所の危機への対応が不十分だったとみなされたことで、手痛い打撃をこうむった。

その後新首相を擁立したものの、民主党は2012年12月の総選挙で大敗し、安倍政権に権力を譲り渡した。それ以来、失地挽回はかなわず、後継政党への支持率は現在10%を下回る。

習近平の訪日も中止か

08年以来の中国国家主席訪問のチャンスとして、安倍首相が慎重に準備をすすめている4月の習近平(シー・チンピン)の訪日も中止になる可能性がある。公式には両国ともに訪日の計画に変更はない、としている。

安倍政権はつい先日も、新たな批判にさらされた。2月27日に突然、全国の小中高校に春休みが始まるまで臨時休校を要請する考えを発表したからだ。

日本のメディアは、教育関係者にとってこの要請が予想外であったことを報じ、教育現場からの「信じられない。教育現場への配慮がまったくない」などというコメントを引用した。

子供はウイルスによる被害が最も少ないグループの1つであり、この措置に反対する人は、医療従事者や、家で子供の面倒をみなければならない人の生活を複雑にするだけだと主張する。

安倍政権はこれまで、首相や首相夫人との関係が疑われた森友学園問題をはじめ、数々のスキャンダルを乗り越えてきた。ただし、今回は異なる展開になりそうだ。

安倍の首相のとしての任期は2021年9月に終了する予定で、すでに求心力は落ちている。安倍政権維持のために、党則で定められた総裁任期を現在の「連続2期6年」から「連続3期9年」に延長する話もあったが、問題が山積するにつれて立ち消えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相が退陣表明、米関税で区切り 複数の後任候補

ワールド

石破首相が辞任表明、米大統領令「一つの区切り」 総

ワールド

インドは中国に奪われず、トランプ氏が発言修正

ワールド

26年G20サミット、トランプ氏の米ゴルフ場で開催
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 5
    ロシア航空戦力の脆弱性が浮き彫りに...ウクライナ軍…
  • 6
    金価格が過去最高を更新、「異例の急騰」招いた要因…
  • 7
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 8
    今なぜ「腹斜筋」なのか?...ブルース・リーのような…
  • 9
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 10
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 7
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 8
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 9
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中