最新記事

マレーシア

マレーシアのマハティール首相が辞任、後継めぐり政治混乱

2020年2月25日(火)13時30分

2月24日、マレーシア首相府はマハティール首相(写真)が国王に辞表を提出したと発表した。写真は2019年12月のロイターとのインタビュー時に撮影(2019年 ロイター/Lim Huey Teng)

マレーシアのマハティール首相は24日、アブドラ国王に辞表を提出した。モハマド・ズキ・アリ内閣官房長官によると、国王は辞任と内閣総辞職を認めたうえで、次期首相が指名されるまでマハティール氏が暫定首相を務めるよう命じた。

世界最高齢の指導者であるマハティール首相(94)は、2018年総選挙で共闘したアンワル元副首相(72)への首相職の禅譲を公言してきたが、政権移譲の遅れを巡り両氏の間で亀裂が生じていた。

前週末には現連立政権を構成する与党の反アンワル陣営と野党が新政権の樹立について協議を行った。

政治の混乱と新型コロナウイルス感染拡大への懸念で、24日の市場で主要株価指数クアラルンプール総合指数は8年ぶりの安値をつけ、10年物国債の利回りは上昇。通貨リンギは0.9%安と、3年ぶりの大幅な下落率を記録した。

アンワル氏と、マハティール氏に近い関係者などによると、同氏の辞任は、18年の総選挙で汚職の一掃を掲げて打倒した旧与党と手を組むとの観測を受けたものだと説明。

アンワル氏は24日午前にマハティール氏と協議後、記者団に「前政権に関わった人たちとの協力は絶対にないとマハティール氏は明確に述べた」と語った。

マハティール氏が所属する与党「マレーシア統一プリブミ党(PPBM)」の党首、ムヒディン・ヤシン氏はアンワル氏率いる人民正義党(PKR)のアズミン・アリ氏と協力関係にあり、関係筋によると、この2人とアンワル氏の対立が今後、表面化する可能性がある。アズミン氏は24日にPKRから除籍された。

新政権樹立に向けた協議には現連立与党の議員らのほか、野党「統一マレー国民組織(UMNO)」と「全マレーシア・イスラム党(PAS)」のメンバーが参加した。

マレーシアの憲法では、議会で多数派勢力を形成すれば、どの議員でも新政権樹立の権利を主張できるが、PPBMに近い関係筋によると、多数派が形成できない場合は新たな総選挙も選択肢に入る。

アンワル氏は新政権樹立に動く意向があるかどうかを明らかにしていない。

マハティール氏は27日に新型コロナウイルス流行を受けた景気刺激策を発表する予定だった。

BOSウェルス・マネジメント・マレーシアの株式担当責任者は「マレーシアに海外の投資家を再び呼び込むのは非常に難しくなった」と指摘した。

*内容を追加しました。

[クアラルンプール ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


20200303issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月3日号(2月26日発売)は「AI時代の英語学習」特集。自動翻訳(機械翻訳)はどこまで使えるのか? AI翻訳・通訳を使いこなすのに必要な英語力とは? ロッシェル・カップによる、AIも間違える「交渉英語」文例集も収録。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国は競争相手にシフト、欧州は内需拡大重視すべき=

ビジネス

米経済活動、ほぼ変化なし 雇用減速・物価は緩やかに

ビジネス

米国株式市場=4日続伸、ダウ314ドル高 利下げ観

ワールド

トランプ氏、南アフリカを来年のG20サミットに招待
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 7
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中