最新記事

アメリカ政治

ウクライナ疑惑めぐる弾劾裁判でトランプに無罪評決 共和党の造反はロムニーだけ

2020年2月6日(木)11時10分

米上院は5日、トランプ大統領の弾劾裁判で、2つの訴追条項のうち「権力乱用」について、52対48で無罪評決を出した。アイオワ州デモインで1月撮影(2020年 ロイター/Leah Millis)

米上院は5日、トランプ大統領のウクライナ疑惑を巡る弾劾裁判で、「権力乱用」と「議会妨害」の二つの訴追条項について無罪評決を出した。11月の米大統領選を前に共和党が結束し、トランプ氏の罷免は回避された。

上院全100議員が投じた票のうち、ウクライナ政府に政敵のバイデン前副大統領(民主党)の調査を要求した行為を巡る「権力乱用」は有罪48票、無罪52票で、有罪・罷免に必要な3分の2に届かなかった。共和党からは重鎮のロムニー議員が有罪に賛成票を投じたが、他に造反者は出なかった。

下院の弾劾調査に協力を拒否した「議会妨害」は有罪47票、無罪53票で、共和党と民主党(無所属含む)で票がはっきりと分かれた。

民主党が多数派を占める下院は12月18日にトランプ氏を弾劾訴追する決議案を可決。弾劾訴追された史上3人目の米大統領となった。

無罪評決を受けてホワイトハウスは、「民主党がでっち上げた偽りの弾劾は、トランプ大統領の正しさが完全に証明され、疑いが晴れる形で終わった。これまでわれわれが表明した通り、大統領は無罪だ」との声明を出した。

トランプ氏は、無罪評決後ツイッターに、2024年以降の大統領選のトランプ陣営の選挙ポスターが次々と表示され、最後は「Trump 4EVA(トランプ永遠に)」のポスターで終わる動画を掲載した。米国の大統領は任期が4年で、憲法の規定により2期までとなっている。

トランプ氏はまた、6日正午(日本時間7日午前2時)に演説し、「でっち上げの弾劾におけるこの国の勝利」について語るつもりだと表明した。

トランプ支持率は安定推移

トランプ氏の支持率は就任以降、大きく変動することなく推移しており、弾劾調査が始まってからもその傾向に変わりはなかった。白人男性、農村部の住民、福音主義のキリスト教信者、保守的なカトリック信者など主な支持基盤の顔ぶれは変わっていない。

ロイター/イプソスの3日実施の世論調査では、トランプ大統領の職務遂行能力に関する支持率は42%で、不支持率も54%と高い。9月に弾劾調査が始まった際の支持率は43%、不支持率は53%と、ほとんど変動していない。

再選を目指すトランプ大統領に共和党内で有力な対抗馬はおらず、8月の共和党全国大会で候補者指名を受けるとみられる。

共和党の上院トップ、マコネル院内総務は無罪評決後に記者団に、民主党は11月の議会選挙を有利に運ぶために弾劾裁判を利用したと批判し、これは「大きな間違い」だったと強調。ロムニー氏の造反については「驚き、失望した」と述べた。

民主党の上院トップ、シューマー院内総務は、不公平な裁判での無罪評決には何の価値もないと一蹴。「大統領はきっと、完全無実が証明されたと豪語するだろうが、われわれは真実を知っている。拡大解釈しても、これは裁判とは言えなかった」と語った。

弾劾裁判は1月16日に開廷。前週末に、民主党が求めるボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)らの証人招致に関する採決が行われ、否決されていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、日韓などアジア歴訪 中国と「ディ

ビジネス

ムーディーズ、フランスの見通し「ネガティブ」に修正

ワールド

米国、コロンビア大統領に制裁 麻薬対策せずと非難

ワールド

再送-タイのシリキット王太后が93歳で死去、王室に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...装いの「ある点」めぐってネット騒然
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月29日、ハーバード大教授「休暇はXデーの前に」
  • 4
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 5
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 6
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 7
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 8
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中