最新記事
教育

世界で唯一、日本の子どものパソコン使用率が低下している

2020年1月8日(水)15時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

この10年間で子どものパソコン使用率が低下している国は他にない recep-bg/iStock.

<国際学力調査「PISA」による日本の子どもの読解力の低下が話題となっているが、もっと深刻な問題は世界で日本だけがデジタル化の潮流に逆行していること>

経済協力開発機構(OECD)の国際学力調査「PISA2018」の結果によると、日本の生徒(15歳)の読解力は15位となっている。前回2009年の調査時の8位から大幅に低下したことで「PISAショック」と騒がれているが、その原因としてコンピュータ形式のテスト(CBT方式)に慣れていないことが指摘されている。

今の10代は幼少期から情報機器に囲まれて育ったデジタルネイティブの世代だが、日本の子どもはスマホは使うものの、パソコンの使用率は低い。上記調査によると、「自宅にノートパソコンがあり、自分もそれを使う」と答えた生徒の割合は35%でしかない。アメリカ(73%)、イギリス(78%)、果てはデンマーク(94%)とは大きな違いだ(デスクトップパソコンについても別途、調査していて同様の結果)。お隣の韓国(63%)とも差が開いている。学校での使用率も同じだ。

調査対象国の中での位置を見ると、驚くべき結果となっている。<図1>は、自宅と学校でのノートパソコン使用率のマトリクスに50カ国を配置したグラフだ。

data200108-chart01.jpg

日本の生徒のパソコン使用率は低く、発展途上国以下であることが分かる。学校での使用率は最下位だ(縦軸)。教育のICT(情報通信技術)化が著しく遅れている。教育のICT化とは授業で情報機器を使い、教授活動の効率を上げることだけを意味するのではない。庶務連絡や提出物のやり取りをネット経由でするなど、校務のICT化も含む。これが進めば教員の過重労働もだいぶ緩和されるはずだが、現実はそうなっていない。

デンマークなど教育のICT化が進んだ国ではパソコンは必須だ。これがないと宿題も出せないし、庶務連絡も届かない。同国の生徒のほぼ全員が自宅で(専用の)パソコンを使うというのは頷ける。

日本の生徒もスマホの使用率は高く、それで十分と考えているようだ。SNSで仲間と交信し、イベント情報等をチェックするだけならスマホで事足りる。だが、情報を独自に加工し、創作物を生み出すとなるとパソコンが必須となる。これからの時代、情報の消費者に甘んじるのではなく、情報の生産者(創作者)になるべきだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米台が関税交渉、APEC貿易相会合開催中の韓国で

ワールド

台湾、中国の新たな軍事演習を警戒 総統就任1周年控

ビジネス

日鉄が物言う株主提案に反対表明、新たな株式報酬制度

ビジネス

再送金融政策は当面現状維持が適当、米関税の影響を懸
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 2
    宇宙から「潮の香り」がしていた...「奇妙な惑星」に生物がいる可能性【最新研究】
  • 3
    ヤクザ専門ライターが50代でピアノを始めた結果...習い事、遅かった「からこそ」の優位とは?
  • 4
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食…
  • 5
    宇宙の「禁断領域」で奇跡的に生き残った「極寒惑星…
  • 6
    戦車「爆破」の瞬間も...ロシア軍格納庫を襲うドロー…
  • 7
    対中関税引き下げに騙されるな...能無しトランプの場…
  • 8
    サメによる「攻撃」増加の原因は「インフルエンサー…
  • 9
    トランプに投票したことを後悔する有権者が約半数、…
  • 10
    「2025年7月5日天体衝突説」拡散で意識に変化? JAX…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 6
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 10
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中