最新記事

イギリス

英国から出ていくには? 英総選挙後に「カナダ移住」検索が増え、貧困者への寄付急増

2019年12月16日(月)14時45分
松丸さとみ

選挙結果を受け抗議の声を上げる人々...... Lisi Niesner-REUTERS

<英国の総選挙で保守党の圧勝の結果を受け、「カナダ移住」などの検索ワードが英国で急増したことが明らかになった......>

「カナダ移住」検索量は普段の49倍に

12日に行われた英国の総選挙で、ボリス・ジョンソン首相率いる保守党が1987年のマーガレット・サッチャー政権(当時)以来の圧勝を果たした。この選挙結果を受け、保守党の勝利を望んでいなかった人たちによる、「カナダ移住」などの検索ワードが英国で急増したことが明らかになった。一方で、「世の中をよくするために慈善活動をがんばろう」と呼びかける人も少なくなく、フードバンクには食料品の寄付が押し寄せた。

インディペンデント紙は、検索サイト大手Googleからのデータだとして、総選挙が行われた12日の夜に出口調査の結果が発表され始めると、英国脱出を考えて検索を始める人が増えたと報じた。移住先として検索されたのはカナダが一番多かったが、オーストラリアやフランス、アイルランドもよく検索されたという。

投票は12日の夜10時に締め切られたが、それから8分後には移住先に関する検索が急増。保守党の大勝が公式に確認された翌朝8時16分にピークに達した。

検索トレンドを追跡しているオンライン・ベッティング(賭け)のサイトOLBGの最高経営責任者リチャード・モファット氏はインディペンデントに対し、「カナダ移住」の検索量は普段、月1700件または1日55件ほどだと説明。しかし総選挙の結果を受けて、最大で月8万3300件、1日にすると2738件と、通常の49倍になる可能性があると明かした。

国外脱出をもくろむこうした検索ワードの増加は、例えば米国では2016年にドナルド・トランプ氏が大統領選で勝った直後や、同年に英国が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めた直後にもみられた。

選挙敗北のショックは寄付や慈善活動で乗り切る?

インディペンデントは前述の記事の他にも、「英国から出ていくには」という記事を選挙の直後に掲載した。同紙は、ジョンソン首相が過去に人種差別的だとされる発言をしたことにも触れ、今回の選挙結果を受けて、有色人種の人たちが英国脱出を考えていると報じた。

インディペンデントは一方で、「国外に脱出する手段を持たない人たちのことも考えるべき」とソーシャル・メディア(SNS)で訴える人たちもいると紹介した。物事をもっとよくするために、あえて英国に残ろうという人たちだ。こうした人たちは、変化を起こすために、自分が住む地域の政党に加わるなどを提案する他、ボランティア活動をしたり、寄付をしたりするよう呼びかけているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中