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超ハイテク監視国家・中国が拡散する悪魔の弾圧ツール

China’s Surveillance State

2019年10月29日(火)17時00分
サラ・クック(フリーダム・ハウス上級アナリスト)、エミリー・ダーク(トロント大学博士課程)

宗教の信者についても、地域によって監視の優先度が異なる。例えば浙江省の公安当局にとっては、キリスト教徒が重要な監視対象となる。東北部の各省では法輪功の信者、チベット自治区と四川省や青海省ではチベット仏教徒が最優先の監視対象だ。

こうした監視技術を提供する企業が多数あり、市場に一定の競争原理が働いていることも、多彩な監視システムが稼働していることの要因と考えられる。ただし一方には、これらのシステムを国家レベルの巨大な監視網に統合する動きも見られる。

例えば億点通のシステムは、ホテルやネットカフェ、空港や駅の情報システムとつながっており、警察がリアルタイムで情報を共有できる。また顔認証カメラと連動したシステムもあり、公共の場所にいる「重点人員」を特定することが可能とされる。

こうして地方単位のデータベースの統合が進めば、習政権は国民の監視を一段と強化できるだろう。10年前でも、党大会などを控えた時期には反体制派やキリスト教徒、法輪功の信者などの集会に警察が踏み込むことはあった。しかし今や、彼らの動向は四六時中監視され、どんな動きも警察に自動通報されているかもしれない。

「重点人員」の定義は拡大解釈される一方だし、収集される情報の種類も増えている。こうなると警察は、どんなに小さくても不穏な動きを見逃さないだろう。それに対抗する手段はほとんどない。

別な懸念もある。大量の個人情報を統合したデータベースのセキュリティー管理の甘さだ。この1年ほどの間、中国では複数の監視システムでデータ保護の脆弱性が見つかり、何百万もの国民の個人情報が危険にさらされていたことが判明している。

民主主義国にも輸出中

こうした監視技術の輸出も深刻な問題だ。アメリカ政府の支援を受けるオープン・テクノロジー・ファンドの報告によれば、中国製の監視システムやインターネット検閲機器は少なくとも73カ国に輸出されている。しかも輸出先にはエジプトのような独裁国家だけでなく、ブラジルやポーランド、マレーシア、韓国なども含まれるという。

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