最新記事

イラク

イラクで大規模反政府デモ、30人以上死亡 外出禁止令やネットアクセス制限も

Iraq Protests: Everything We Know So Far as Death Toll Rises

2019年10月4日(金)16時50分
ローラ・パワーズ

反政府デモ3日目、外出禁止令のなか抗議する人々(10月3日、イラクのバグダッド) Thaier al-Sudani-REUTERS

<失業や公共サービスの不備に不満を募らせた市民と治安部隊の衝突で死者30人以上との報道も>

イラクでは10月1日から始まった反政府デモが激しさを増している。政府は抗議行動の取り締まりや外出禁止令の発令、インターネットやソーシャルメディアへのアクセス制限などで鎮静化を図っているが、中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると3日の時点で死者の数は31人にのぼったと報じられている。


政府は首都バグダッドをはじめ国内の複数の都市に外出禁止令を発令。またインターネット上の著作物やサイバーセキュリティなどを監視する団体「ネットブロックス」によれば、イラク国内ではインターネット接続が通常の70%に制限され、フェイスブックやツイッター、ワッツアップやインスタグラムなど主要なソーシャルメディアへのアクセスが遮断されている。

アルジャジーラのイムラン・カーン特派員は、外出禁止令は概して功を奏していると報じた。「デモの参加者たちは終日、バグダッド市内で集会をもとうとしているが、50~60人集まるたびに治安部隊に解散させられている。政府はいつ外出禁止令を解くつもりなのかを明らかにしていない」

デモ隊を排除するための治安部隊の手法も激しさを増しており、催涙ガスや実弾も使用されている。


デモ隊の要求はエスカレート

イラクの治安当局筋によれば、3日にはバグダッド中心部の政府官庁街「グリーンゾーン」で2件の爆発が発生。デモ隊が同区域に集まる政府庁舎や在外公館を攻撃するのではという懸念から、周辺一帯が封鎖された。

デモが発生したのは10月1日。若者を中心とする大勢の市民がバグダッドに集結し、失業の増加や政府の腐敗、公共サービスの不備などへの不満を訴えた。イラクでは停電が頻発し、夏場の暑さをしのぐ手段を奪われた市民は苛立ちを募らせていた。

アルジャジーラの報道によれば、一連のデモに指導者はおらず、特定の宗教や政党による後押しもない。デモは主にソーシャルメディア上で組織されているという。

デモが始まって以降、デモ隊の要求もエスカレートしており、多くのデモ参加者がアデル・アブドルマフディ政権の交代を求めている。

デモは開始から3日で国内全域に拡大した。暴力はほとんどないが、ウォールストリート・ジャーナル紙によれば、南部ナジャフではデモ隊が政党の事務所に放火した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

日経平均は大幅反落、1000円超安で今年最大の下げ

ワールド

中国、ロシアに軍民両用製品供給の兆候=欧州委高官

ワールド

名門ケネディ家の多数がバイデン氏支持表明、無所属候

ワールド

IAEA、イラン核施設に被害ないと確認 引き続き状
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中