最新記事

人身売買

英国コンテナ39人遺体 日本で働いたベトナム女性は家族のため再び異国へ渡り亡くなった

2019年10月31日(木)19時00分
チュック・グェン(フリーライター)

3年間日本で就労した経験があったというトゥラ・マイ。ソーシャルメディアより

<アジア系の若い男女が遺体で見つかった事件は、外国人労働者をめぐる闇を明るみにした──>

ベトナム北中部の複数の地方に点在する田舎町は今深い悲しみに包まれている。10月23日、遠く故郷を離れた英国ロンドン北東にあるエセックス州グレイズで冷凍トラックの荷台コンテナから発見された39体の遺体の中にベトナム人が含まれていることがわかったからだ。

コンテナ内で不慮の死を遂げたベトナム人の中に家族がいるとみられるハティン省、ゲアン省に住む28家族は、ベトナム当局から英国で見つかった遺体に関する手掛かりや情報が入るのを絶望的な気持ちで待ち続けている。

英BBCや米CNNなどによると、10月23日午前グレイズの救急隊は、ウォーターグレイド産業の敷地内に駐車していた大型トラックのコンテナ内に39人の遺体があるとの緊急連絡を受けて現場に急行した。

コンテナの中には8人の女性と31人の男性の遺体があり、全員の死亡が確認された。現場に到着した警察によって、当初は犠牲者全員が「中国人である」と発表され、駆けつけた在英中国大使館も全員が中国人と確認したという。

しかし中国人と断定する根拠となった所持品のうち、少なくとも6人の中国旅券が偽造であることが10月25日に判明。別の所持品などから「中国人ではなくベトナム人の可能性が高い」と発表された。連絡を受けた在英ベトナム大使館関係者などが本国治安当局と連絡をとりながら、英警察と協力して犠牲者の身元特定の作業が懸命に続けられているという。

ゲアン省のパン・バン・ティン氏は「私の娘は10月3日にベトナムを出発し、フランスとイギリスに渡航するために中国に行った」という報告書をベトナム当局に提出。26歳になる娘パム・ティ・トゥラ・マイさんが犠牲者に含まれている可能性が極めて高くなっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中