最新記事

イスラム国

ISが収容所から脱走!懸念された再結集が現実になる?

Hundreds of ISIS Affiliates Escape Syrian Prison Camp

2019年10月15日(火)18時00分
ジェイソン・レモン

トルコ軍の攻撃を受けるクルド人の都市テルアビヤド(10月10日) Murad Sezer-REUTERS

<トランプはISは壊滅させた、もう心配はないと言ってきたが、そのトランプ自身の失策によってISは再び野に放たれた>

ドナルド・トランプ米大統領はこれまでに何度も、過激派組織IS「自称イスラム国」は米軍が掃討したので心配はいらないと述べてきた。しかしこのほど、シリア北東部にある収容所から、IS戦闘員と関係者数百人が脱走したことを地元当局が明らかにした。

英紙ガーディアンの報道によれば、シリア北部ラッカのアインイッサにある収容所で暴動が起き、女性と子どもを含むIS傘下の少なくとも750人が脱走した。この暴動は、トルコ軍がシリアに侵攻した後に起きた。トランプは10月7日、トルコ大統領レジェップ・タイイップ・エルドアンがシリアを攻撃するのを黙認し、シリアからの米軍撤退を指示していた。

トランプの撤退決定は大きな論議を呼び、共和党と民主党の大物議員たちは激しく非難した。米軍が撤退すれば、ISが復活する可能性があるほか、シリア情勢に関与しているイランやロシアなど、アメリカと敵対する大国がシリアで勢力を伸ばしかねないという。

クルド人主体の武装勢力「シリア民主軍(SDF)」によれば、10月12日頃には、シリア北東部の都市カーミシュリーにある別の収容所からも、ISの戦闘員5人が脱走した模様だ。

ISは壊滅させた、とトランプ

米軍はこれまで、IS掃討作戦にあたってSDFに武器を与え訓練するなど支援してきた。しかし、トランプは10月6日、トルコによるシリアへの軍事作戦にアメリカは関与せず、同地からアメリカ軍を撤退させるという驚きの発表を行った。トルコとクルド人勢力は、長年にわたって対立関係にある。そして、トランプの今回の決断によって、アメリカは重要な同盟相手を見捨てたと、アメリカの議員ならびにクルド人指導者たちの多くから非難の声が上がっている。

IS捕虜の収容所はアメリカとの合意によりクルド人勢力が管理してきた。米軍が撤退すれば、クルド人が手を引くことは予想されていた。

これに対しトランプは10月10日、ISはすでに壊滅しており、アメリカは同地での紛争にこれ以上関わるべきではないと力説した。

トランプは報道陣にこう言った。「私たちは勝利した。ISISを撃破し、徹底的に打ち負かした。もう私たちの兵士はいらない。何千何万もの米兵を送り込むのは2度とごめんだ」

トランプは何カ月も前から、ISはすでに退治したと主張しているが、アナリストや共和党議員の見方は違う。

トランプを支持してきた共和党の重鎮議員でさえ異を唱える。サウスカロライナ州選出の共和党上院議員リンゼー・グラムは、今回トランプを繰り返し批判。アメリカ軍撤退に対する反対論をリードしている。

<参考資料>エルドアンに「言いくるめられた」トランプ、米軍シリア撤退ならISが甦る
<参考資料>クルド女性戦闘員「遺体侮辱」映像の衝撃──「殉教者」がクルド人とシリアにもたらすもの

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ

ワールド

アングル:反攻強めるミャンマー国軍、徴兵制やドロー

ビジネス

NY外為市場=円急落、日銀が追加利上げ明確に示さず

ビジネス

米国株式市場=続伸、ハイテク株高が消費関連の下落を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 5
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中