最新記事

ブレグジット

イギリス政府、10月末離脱を断念せず 延期要請書面に首相署名せず

2019年10月21日(月)08時25分

ジョンソン英首相(写真)は、離脱期限の延長を欧州連合(EU)に要請することを余儀なくされたが、英政府は10月31日の期限に離脱する構えを崩していない。ロンドンの首相公邸前で19日撮影(2019年 ロイター/Simon Dawson)

ジョンソン英首相は、離脱期限の延長を欧州連合(EU)に要請することを余儀なくされたが、英政府は10月31日の期限に離脱する構えを崩していない。

英下院は19日、ジョンソン氏がEUと合意した離脱案について、関連法案が成立するまで採決を先送りにする動議を可決。これにより、同日中に離脱案に対する議会の承認が得られなくなり、ジョンソン氏は、合意なき離脱反対派が9月に成立させた法律に従い、来年1月31日までの離脱延期をEUに書面で要請することを余儀なくされた。

しかし、その書簡にはジョンソン氏の署名はなく、同氏は延期を望まない意向を示した署名入りの書簡も送っている。

合意なき離脱の準備を担当する主要閣僚のマイケル・ゴーブ氏は、スカイニュースに対し「10月31日に離脱する。われわれにはその手段と能力がある」と主張。

「議会によって義務付けられたため書簡を送ったが、議会は首相の決心や、政府の方針、決意を変えることはできない」と指摘した。

ジョンソン氏は、トゥスクEU大統領宛てに3通の書簡を送った。1通目は、政府が単に法律に従っていることを説明した駐EU大使のカバーレター。2通目は、離脱延期要請を義務付ける法律に基づく文面で、ジョンソン氏の署名はない。3通目には、離脱延期を望んでいないというジョンソン氏の意向が書かれている。

3通目の書簡でジョンソン氏は「首相に就任して以降、私は、さらなる(離脱)延期は英国とEU諸国の利益や関係を損ねるとの自身の見解と政府の立場を明確にしてきた。きょう議会で再び、それを明確にした」と説明。書簡には「ボリス・ジョンソン」と署名が入っている。

ジョンソン氏はまた、10月31日の期限までに議会で関連法案を成立させることに自信を示した。

英国からの矛盾する意思表示を受け、EU当局者は困惑している。

トゥスク大統領は、ジョンソン氏から延期申請を受け取ったことを明らかにし、対応についてEU首脳らと協議を始める方針を示した。

フランス政府当局者によると、マクロン大統領は、ジョンソン氏に対し、19日の英議会の離脱採決先送りを受け、状況の迅速な説明を求めた。「(マクロン氏は)延期は誰にとっても利益にならないとの考えを示唆した」という。

英国の合意なき離脱が与える影響を踏まえると、EU加盟27カ国が英国の離脱延期要請を拒否する可能性は低い。外交筋が20日に語ったところによると、EUは決断を急がず、英国の状況を見極めるため時間を稼ぐとみられる。

ゴーブ氏は、合意なき離脱リスクが高まったとし、政府の危機管理計画の実施など離脱への備えを強化する方針を示した。

英野党・労働党は、ジョンソン氏が法を超越しているかのように振る舞っていると非難。同氏は法廷闘争に直面すると指摘した。

[ロンドン 20日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、新START延長巡り米の回答待ち=外相

ワールド

情報BOX:中国、軍事演習で台湾威圧 過去の海峡危

ワールド

米、イスラエル向けF15戦闘機の契約発表 86億ド

ワールド

トランプ氏「台湾情勢懸念せず」、中国主席との関係ア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 7
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中