最新記事

韓国

韓国で長引く日本製品不買運動、韓国企業への影響が徐々に明らかに

2019年9月27日(金)17時30分
佐々木和義

日本のビールはまったく置いていなかった...... 撮影:佐々木和義

<長引く日本製品の不買運動による韓国企業と韓国従業員の被害が、徐々に明らかになってきている......>

日本製品の不買運動が長引く韓国で、韓国の食品業や旅行業を中心に被害が拡大している。一方の日本の素材メーカーは、グループA(ホワイト国)除外で今後の輸入に不安をもつ韓国企業から在庫を積み増したいという"特需"要請が寄せられているなど、韓国側の被害が大きい実情が明らかになっている。

日本製ビールの輸入販売企業は、週1回の無給休暇を導入......

サッポロビールの輸入販売を行うエムズビバレッジは8月から65人の全従業員を対象に週1回の無給休暇を導入した。乳業大手の毎日乳業を傘下に持つ毎日ホールディングスが設立した輸入会社で、不買が長期化すれば事業を整理する可能性もあると業界は観測する。

ロッテアサヒ酒類は、例年、夏のシーズンに広報活動を展開してきたが、今年は7月4日以降中断している。アサヒビールの販売促進を請け負う広告代理店等は受注がなく、2次被害を受けている。キリンビールの輸入販売を行うハイト眞露とサントリーを扱うOB麦酒は、損失を日本以外のビールで補填するが、2009年以降1位を維持してきた日本ビールの8月の輸入は13位まで後退した。

日本の財務省が集計した8月の貿易統計によると日本の韓国向け食品輸出は前年同期比40.6%減だったが、輸入会社の在庫がかさんでいる。消費期限が切れた食品は処分する以外になく、日本食品を扱うある輸入会社は不買運動の影響で処分する食品が15億ウォンに達すると試算する。

LCCは従業員の無給休暇を計画、小売業の従業員も......

旅行業界も深刻だ。旅行大手のハナツアーは、日本担当チームの半数以上を東南アジアや欧州を担当する部署に異動させたが、低価格航空会社LCCのイースター航空は10月から従業員の無給休暇を計画する。ウォン安と燃料の高騰で累積赤字が膨らむ同社に「ボイコットジャパン」が追い打ちをかけたのだ。

訪日韓国人の激減で対馬にある韓国系観光業界も悲鳴を上げている。夏休みに1日3000人以上訪れていた韓国人観光客が200人台まで落ち込んだのだ。新たに開業した宿泊施設や食堂、土産物店は韓国資本が多く、対馬で観光に従事する200人あまりの韓国人従業員が被害を受けている。

撤退が噂される企業もある。2019年9月6日、フィナンシャルタイムズが、韓国日産が撤退を検討中と報じている。8月の日本車販売は、レクサスは前年をわずかに上回ったが、トヨタとホンダは半減、日産は販売数が58台にとどまった。撤退に際して従業員が関連企業等へ再就職できるよう支援するケースはあるが、ルノーサムスン自動車もリストラを進めている。生産の約半数を占める日産からの委託契約が終了するのだ。もし撤退が決まれば70人近い韓国人従業員の多くが仕事を失うことになりかねない。

一方、真っ先に不買運動の槍玉に上がった韓国ユニクロは9月と10月に3店舗を閉店するが、入居するショッピングセンターの閉店などで不買とは関係がない。利用客は激減したが9月6日に安養店、20日には富川店をオープンさせており、従業員の有給休暇を検討するほか大きな変化はないようだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

EXCLUSIVE-ECB、銀行資本要件の簡素化提

ワールド

米雇用統計とCPI、予定通り1月9日・13日発表へ

ワールド

豪が16歳未満のSNS禁止措置施行、世界初 ユーチ

ワールド

ノーベル平和賞受賞マチャド氏の会見が中止、ベネズエ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中