トランプの無為無策がイラン危機を深刻化させる
Trump’s Incoherence on Iran
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は調停役を務めるべく、9月に入ってイランに150億ドルの融資を提案した。原油輸出減少への補償という形であり、核合意の履行を一部停止しているイランが以前どおり遵守するなら、という条件付きだった。トランプはこの提案を検討したが、結局、承認はしなかった。だが、たとえ承認していたとしても短期的な対策にすぎず、根本的な問題は解決されないままだ。
アメリカもサウジアラビアもイランも爆弾を担いで袋小路でもみ合い、歯止めをかける者はいない──世界一の大国を率いる人物が国益を考えることができず、善なる目的に国力を使う方法を知らない混迷の世界。私たちはそんな悲劇の中にいる。
©2019 The Slate Group
<本誌2019年10月1日号掲載>
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※10月1日号(9月25日発売)は、「2020 サバイバル日本戦略」特集。トランプ、プーチン、習近平、文在寅、金正恩......。世界は悪意と謀略だらけ。「カモネギ」日本が、仁義なき国際社会を生き抜くために知っておくべき7つのトリセツを提案する国際情勢特集です。河東哲夫(外交アナリスト)、シーラ・スミス(米外交問題評議会・日本研究員)、阿南友亮(東北大学法学研究科教授)、宮家邦彦(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)らが寄稿。