最新記事

韓国

韓国航空会社の受難......ウォン安、原油高騰に「ボイコットジャパン」が追い打ち

2019年9月17日(火)18時45分
佐々木和義

「ボイコットジャパン」の影響が直撃

第3四半期がはじまった2019年7月はじめに日本政府が韓国に対する輸出規制を発表すると、不買運動が発生した。訪日観光客が減少し、LCCは地方路線を中心に休止や減便を発表した。赤字路線を休止する口実に運動を利用したのだ。

ところが、「ボイコットジャパン」の動きはますます拡大する。キャンセル料の負担を嫌う利用客で7月の訪日韓国人は前年同期7.6%にとどまったが、新規予約は半減。8月に仁川空港を発着した旅行者は前年比で3.2%増加したが、日本行きは19.5%減少した。

9月の連休はさらに深刻だ。エアプサンは連休2週間前の時点で前年に90%台だった予約が40%台まで半減する。利用率は半減だが、すでに休止や減便を実施した路線もあり実際の利用者は4分の1である。
路線休止で余剰となった機材を他の路線に振りかえたいLCCだが、中国が新規路線を認めないなど繁忙期には間に合わない。そもそも収益性が高い日韓線をカバーする路線はないのである。

半導体など貨物の不振が大きいという分析も

受難はLCCだけではない。2019年4月に株式の売却を発表したアシアナ航空も先行きは不透明だ。入札公告から1か月を経過した8月25日時点で参加表明は、済州航空を傘下に持つ愛敬グループ1社だけだった。
売却主幹事のクレディ・スイス証券は、予備入札を経て同9月10日までに愛敬グループやHDC現代産業開発・未来アセット大宇など4グループを適格買収者候補に選定したが、10大財閥の参加はなかった。

買収予想額は1兆5千億ウォンから2兆ウォンだが、アシアナ航空の負債は8兆ウォンに達している。愛敬グループの資産は約3兆ウォンで流動資産規模は1兆2000億ウォン余り。取得できて負債を補填する目処はない。

2019年第2四半期、大韓航空とアシアナ航空は1000億ウォンの赤字を計上した。半導体など貨物の不振が大きいという分析がある。旅客は季節等の要因で変動するが、空洞化が進む韓国で貨物需要が増える見込みはない。

10大財閥など韓国企業にとって新規参入が難しい自国ブランドの既存航空会社FSCを有する対外的な効果は大きいが、先行きに明るい材料が見えないアシアナ航空の買収は重荷でしかないのだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

核保有国の軍拡で世界は新たな脅威の時代に、国際平和

ワールド

米政権、スペースXとの契約見直し トランプ・マスク

ワールド

インド機墜落事故、米当局が現地調査 遺体身元確認作

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、円安で買い優勢 前週末の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中