最新記事

香港デモ

「できることなら辞任する」香港行政長官キャリー・ラムが語った本音とは?

2019年9月4日(水)10時40分

香港は死なず

林鄭氏は2017年7月に行政長官に就任。中国政府寄りの政策を強引に進め、中国の習近平国家主席から厚い信任を得ている。国営通信の新華社によると、昨年12月に長官が北京を訪れた際には習国家主席が「中央政府は林鄭長官の仕事ぶりと香港政府を全面的に支持している」とお墨付きを与えた。

前出のチャン氏は、林鄭氏は議論を呼んだ多くの提案を推進して成功を収めたことで、「逃亡犯条例」改正案も成立可能だと確信を持っていたと指摘。

「それまでの成功が重なって長官は自信満々だった。最初に抗議デモが起きたときにも、『心配ない。2日あれば事態は収まる』と考えていた。しかし長官は完全に間違っていた」と指摘する。

林鄭氏は先週の会合で、逃亡犯条例改正案は自身の進めたことで、「香港の制度の大きな抜け穴を塞ぐ狙いがあった。中央政府からの指示や強制はない」と説明した。

林鄭氏は逃亡犯条例改正案の成立を目指したことについて「状況を考えれば非常に軽率だった。香港の住民の間に中国本土に対する大きな恐怖と不安があり、それをわれわれは十分に感じ取り、把握していなかった」と語り、深い後悔の念を示した。

同氏は会合で、暗い見通しを示した。

警察は今後も「暴力をエスカレートさせた」容疑者の逮捕を続けると断言。事態がいずれ好転するというバラ色の未来を示すのは甘い考えだと強調した一方、香港はいずれ「再生する」との期待も明らかにした。

さらに「香港はまだ死んでいない。極めて重い病にかかっているが、まだ生きている」と述べた。

*配信済みの記事に情報を追加し、再構成しました。

[香港 2日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



香港行政長官キャリー・ラムが「辞任」について言及した非公開会合の録音 CNA / YouTube



20190910issue_cover200.jpg
※9月10日号(9月3日発売)は、「プーチン2020」特集。領土問題で日本をあしらうプーチン。来年に迫った米大統領選にも「アジトプロップ」作戦を仕掛けようとしている。「プーチン永久政権」の次なる標的と世界戦略は? プーチンvs.アメリカの最前線を追う。


202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

「外国人嫌悪」が日中印の成長阻害とバイデン氏、移民

ビジネス

FRB、年内利下げに不透明感 インフレ抑制に「進展

ワールド

インド東部で4月の最高気温更新、熱波で9人死亡 総

ビジネス

国債買入の調整は時間かけて、能動的な政策手段とせず
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中