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児童虐待は検証率「わずか5割」 どうすれば悲劇を断ち切れるのか

2019年9月19日(木)11時20分
印南敦史(作家、書評家)

児相はこのとき、自宅に戻した理由を「保護者の拒否感が強い中、学校できちんと見ていただこうという形になった」と説明しているが、そんな「他力本願」でこの重たい問題が解決できるはずもない。

真冬の浴室で冷水のシャワーをかけられるなど、父親から度重なる暴力を受けた心愛さんは、自宅に戻ってから1年も経たないうちに亡くなったのだった。


 結愛ちゃんも、心愛さんも、一度は虐待を理由に保護された後、再び自宅で親と暮らした末に、その幼い命を奪われた。児相は、虐待が繰り返される可能性を把握しながら、2人の家庭に潜んでいた危険性を見極め、適切に対処することができなかった。(140〜141ページより)

繰り返される悲劇に対処すべく、政府も"動いてはいる"。

例えば22年度までに、児童相談所で相談に応じたり必要な指導を行ったりする児童福祉司を約2000人増やし、現在の1.6倍にする計画を発表したこともそのひとつだ。専門性を高めるため、児童福祉司に任用する要件の厳格化の検討を打ち出し、支援する職員の質量の充実を図るとした。さらには、児相が子供を保護せずに在宅で指導している全ての虐待事案について、子供の安全を緊急点検してもいる。

とはいえ、こうしたことがどれだけの「結果」につながるのかについては未知数だとしか言いようがない。この程度のことで状況が改善できるはずもないことは、誰の目にも明らかだからだ。

虐待による悲劇の連鎖を、どうすれば断ち切れるのか。子に手を上げ、傷つける可能性がある親に対して、児相はどう対処したらいいのか。警察や裁判所などの機関、地域社会やその構成員である私たちが、もっと関われることは何なのか。

こうした課題に対する答えを、行政も社会もそろそろ見出すべきだと著者は記しているが、まったくもって同感である。そして、この問題は一例に過ぎないが、このように家族内事件を自分ごととして考える必要があることを、本書は教えてくれもするのだ。


孤絶――家族内事件
 読売新聞社会部・著
 中央公論新社

[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に「ライフハッカー[日本版]」「東洋経済オンライン」「WEBRONZA」「サライ.jp」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)をはじめ、ベストセラーとなった『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)など著作多数。


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