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インドネシア

パプアで再び衝突、警察官ら21人死亡 各地で政治不信デモも、事態は混沌と

2019年9月24日(火)12時34分
大塚智彦(PanAsiaNews)

西ジャワ州のバンドンでも学生らのデモがエスカレートし暴動になった。KOMPASTV / YouTube

<インドネシアでのパプア人差別に対する抗議のデモは、多数の死者を出す事態に。さらに首都ジャカルタでは政治不信を訴える大学生1万人が警官隊と対峙するなど緊張が走っている>

インドネシアの最東端ニューギニア島の西半分を占めるパプア州で9月23日、パプア人と治安部隊が複数の都市で衝突し、これまでに兵士1人を含む21 人が死亡し、約100人が負傷、大学生ら318人が逮捕された。

インドネシアのアンタラ通信や英字紙「ジャカルタ・ポスト」(ネット版)、コンパスTVなどが23日夜に伝えたところによると、同日午前、州都ジャヤプラにある国立チェンドラワシ大学アベプラキャンパスで講堂にいた大学生など数百人を治安部隊が別の場所に移送しようとしたところ、衝突となり兵士1人、大学生3人が死亡し大学生318人が逮捕された。

インドネシア各地の大学からパプアに戻って地元のデモや集会に参加していたパプア人大学生とチェンドラワシ大学の学生らは「差別撤廃」「住民投票の実施」などを求めてジャヤプラ市内で連日デモや集会を開いて治安部隊と衝突を繰り返していた。

このため23日午前、治安部隊が大学生の活動拠点となっているキャンパス内の講堂から移動、解散するよう命じた。

しかし約3時間経過しても大学生が移動に応じなかったために警察部隊が大学構内に入り、講堂から大学生の強制排除を始めたという。現地からの情報では大学前の道路は完全封鎖され、厳重な警備下で大学生ら200人がバスやトラックの荷台に分乗させられて市内の「エキスポ・ワエナ文化センター」に向けた移送が開始された。

ところが、移送中の車両1台が大学生に襲撃され、同乗していた兵士1人が喉を切られて死亡。これに対し治安部隊も発砲、死傷者がでたという。

国家警察のデディ・プラセトヨ報道官は23日、移送中の大学生が突然治安部隊に襲い掛かり、警察官はゴム弾で反撃し近距離から発射したゴム弾などで大学生3人が死亡し、兵士1人大学生20人が負傷した、としている。


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