最新記事

ポルトガル

人手不足に悩むポルトガル、減税措置などで自国民の帰国呼びかけ

2019年8月23日(金)17時15分
松丸さとみ

安全で寛容なポルトガル、マドンナも移住

人材不足を何とか解消しようと、ポルトガルでは「帰国プログラム」に先立ち、「ゴールデン・ビザ」という政策も始めていた。これは雇用を創出する外国人や、50万ユーロ(約6000万円弱)以上の不動産を購入する外国人に発行されるビザで、スキルの高い就労外国人は、税制の優遇措置も受けられる。このビザを活用して、マドンナなどの著名人も現在、ポルトガルに居住地を移したと言われている。

英経済紙フィナンシャル・タイムズは8月9日付の記事で、ポルトガルは欧州連合域内でもっとも安全であり、また人種の多様性に寛容であることからも、移住した外国人は多くが満足していると伝えている。外国人居住者は3年連続で増加しており、昨年は9万3000人以上の増加で、合計50万人近くに達したという。

しかしこうした一連の政策も、それに見合うだけの国内経済がないと意味がない、という手厳しい意見もある。ポルトガル南部の英字メディア「フアルガルベ・デイリー・ニュース」は「帰国プログラム」について、「すでに帰国を決めている人は活用できる」としながらも、このプログラムが理由で母国へ帰ろうとする人はなかなかいないだろうと指摘する。さらに、ポルトガルには給料の良い仕事や適正な仕事が十分ないため、「帰国プログラム」はこれからポルトガルを離れようとする人たちを思いとどまらせる役には立たないと加える。

エコノミスト誌も、ポルトガルの平均年収(2018年)がユーロ圏平均の半分以下となるわずか1万2000ユーロ(約141万円)であることから、ホワイトカラーの人は移住をためらうのではないかと指摘する。同誌はそれでも、アルガルベ・デイリー・ニュースよりは楽観的だ。グーグルやBMWがポルトガル首都のリスボンと北部港湾都市のポルトにそれぞれテクニカル・サポート・センターを立ち上げたため、今後はこうした状況が変わるかもしれない、との展望を述べている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中