最新記事

香港

香港デモ弾圧はイギリス人幹部が主導していた!

2019年7月22日(月)11時55分
ジャック・ヘイズルウッド(英NGO「ブリッツ・フォー・ホンコン」共同創設者)

デモ隊を鎮圧する香港警察(7月21日) Tyrone Siu-REUTERS

<過激な鎮圧は英統治時代の負の遺産。暴動鎮圧テクニックを受け継ぐイギリス人幹部らの存在が明らかになった>

かつては「アジア最良」と呼ばれた香港警察。だが6月の大規模デモ以来、その過剰な暴力的取り締まりに非難が集まっている。背景には、イギリスの植民地時代までさかのぼる警察の非道な手法と、暴力で対抗してきたデモ参加者、という負の遺産が見えてくる。警察の非道な手法は今も、香港警察で中心的役割を担うイギリス人警察官に受け継がれている。

香港警察は1994年に外国人の採用を中止したが、一部のイギリス人幹部は返還後も香港警察にとどまって上層部を牛耳っている。非難を浴びた6月12日のデモ弾圧でも、ルパート・ドーバー警視を筆頭に3人のイギリス人幹部が中心的役割を担った。

この日、香港警察は平和的なデモに対してゴム弾や催涙スプレーを使用。機動隊に殴られて失神するデモ参加者もいた。いずれもドーバーらの指示によるものだった。

しかし返還後の香港警察の暴力的取り締まりは、より深いところに根差している。

事の発端は中国の文化大革命が最高潮に達した1967年。香港では本土の紅衛兵の活動に触発された労働争議が相次ぎ、やがて親共産主義の暴徒が爆弾を仕掛けるなど史上最悪の暴動に発展した。香港警察は暴力的な鎮圧に乗り出し、51人が死亡、数百人が負傷した。

香港警察は、イギリス本国にとって過激すぎる新戦略をまず植民地で試したのだ。イギリス警察はその手法を学んで自国のデモ鎮圧に使いたがった。

サッチャー政権下の1981年、人種暴動への対応で批判を浴びたイギリス警察は、香港警察トップに協力を要請。香港警察幹部1人がイギリスに派遣され、デモ鎮圧の手法を全て伝授した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏成長率、第1四半期は予想上回る伸び 景気後

ビジネス

インタビュー:29日のドル/円急落、為替介入した可

ワールド

ファタハとハマスが北京で会合、中国が仲介 和解への

ビジネス

ECB、インフレ鈍化続けば6月に利下げ開始を=スペ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 8

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 9

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 10

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中