最新記事

中国

ごみ焼却施設建設をめぐって、中国・武漢でデモがヒートアップ

2019年7月18日(木)19時10分
ケンドラ・ブロック(元武漢軽工大学教員)

ごみ処理問題は中国各地で深刻化している(江蘇省蘇州のごみ焼却発電プラント) ALY SONGーREUTERS

<ネットでは警官隊の暴力的な鎮圧に非難の声が――行動する若者たちが中国を変える契機に?>

中国内陸部の武漢で、ごみ処理施設をめぐり市民と当局の対立が激しさを増している。6月28日、新洲区陽邏住宅地区の住民が、ごみ焼却施設の建設計画に反対して市庁舎周辺でデモを開始した。

中国SNSの新浪微博に投稿された画像やコメントによると、デモ隊は大勢の警官隊と衝突。警官側が高齢者を含むデモ参加者を殴打するなど、当局による強引な鎮圧に非難の声がネット上で広がっている。

中国の他の都市と同じく、武漢も深刻なごみ問題を抱えている。都市化が進む一方、ごみ処理場が不足しているのだ。市当局には、陽邏地区にあるごみ埋め立て地からの悪臭への苦情と、埋め立て地の新設に関する不安の声が多数寄せられていた。

ごみ問題は人の命をも奪いかねない。深圳では15年に建設廃棄物の山が崩れて団地をのみ込み、73人が命を落とした。

解決策として、武漢ではごみを焼却してエネルギーに転換する施設の建設が計画された。市内6番目の同種の施設として1億9900万元(約31億円)をかけて建設される陳家沖ごみ焼却発電所は、1日当たり2000トンのごみ処理能力があるという。この施設は同地区で進められている「循環型エコノミー」パーク構想の一環でもある。

2億人以上が投稿を閲覧

住民がこの施設に反対するのには相応の理由がある。陽邏地区の代表らが書いたとされる新浪微博の投稿によると、懸念は主に2つ。施設の運営企業への疑問と、建設予定地の周辺環境だ。こうした施設は住宅地から最低1.5キロ離れた場所に建設すべきとされるが、今回の予定地は最も近い住宅地から800メートルしか離れていない。

さらに、この投稿によれば、この事業を請け負っている国有企業の武漢環投融誠再生資源有限公司は、今年4月17日に設立されたばかり。「循環型エコノミー」の推進母体である武漢の長江ニューシティーが事業を申請するわずか2日前だ。

市の記録によると、武漢環投融誠という名称が承認されたのは4月11日。市内にはごみ焼却発電の実績がある企業がいくつも存在することを考えると、新設されたばかりの企業が選ばれたのはあまりに不自然だ。

今回の反対運動が起きた施設の建設は、事業計画より2カ月早く始まった。これには、企業と政府による既成事実づくりが目的ではないかとの声がある。

気候変動対策をめぐるデモが世界に広がるなか、運動の中心的役割を担うのは若者たちだ。投稿画像にも、若者が参加者にメガホンで呼び掛ける姿が見られる。このデモに関する投稿は6月末までに、2億3100万人以上の人々が閲覧した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

プーチン氏、15日にトルコで直接協議提案 ゼレンス

ビジネス

ECBは利下げ停止すべきとシュナーベル氏、インフレ

ビジネス

FRB、関税の影響が明確になるまで利下げにコミット

ワールド

インドとパキスタン、停戦合意から一夜明け小康 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノーパンツルックで美脚解放も「普段着」「手抜き」と酷評
  • 3
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦闘機を撃墜する「世界初」の映像をウクライナが公開
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    指に痛みが...皮膚を破って「異物」が出てきた様子を…
  • 6
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 7
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 8
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 4
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 8
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 9
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 10
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中