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「貧困の壁を越えたイノベーション」湯浅誠がこども食堂にかかわる理由

2019年7月15日(月)12時15分
Torus(トーラス)by ABEJA

そこに、合理性はないわけです。でも多くの人の頭の中では、なぜか明確に分かれています。年金は「自分の金」、生活保護は「ひと様の金」。

それはもう、そういうもんなんですよ。

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そういう状態を何とかしようといろいろ発信したこともあります。こども食堂に対して、子どもに飯を食べさせない親の責任はどうなるんだという指摘に、「いや、それは」と自分が答えようとした。だけど私がどうこう言って何か変わるわけではないことは、もう十分骨身にしみてます。

自分の言っていることが響いているように感じるのは、そういう狭いコミュニティの中に自分がいるだけ、ということが少なくない。でも貧困問題は、もう狭いコミュニティで全体を引っ張っていく時期ではありません。もっと「ふつう」の、「貧困の子って、そんなにいるのか」と感じている人たちに、リーチしていかないと。それには「工夫」がいります。

だからいまは、以前のような姿勢はとりません。

これがインフラとして社会に定着すれば、言われなくなる。だからインフラづくりを先行させた方がいい。別の方向から雰囲気を醸成していくのがいい。

そういえば今日、茶話会に呼ばれてきました。参加者のお母さんが、我が家には子どもの友だちが毎日来ているんだけど、ある日12人も来ちゃったことがある、と。そのときプリンをボールいっぱい作ってあげたら、あっという間になくなっちゃったんだそうです。

それってこども食堂じゃないですか、と言ったんですけどね。

取材・文:錦光山雅子 写真:西田香織 編集:川崎絵美

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湯浅 誠
1969年東京都生まれ。90年代からホームレス支援にかかわり、2009年から足かけ3年間、内閣府参与。法政大を経て現在、東京大学先端科学技術研究センター特任教授。NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長。著書・共著に「子どもが増えた! 人口増・税収増の自治体経営」「反貧困」など。

※当記事は「Torus(トーラス)by ABEJA」からの転載記事です。
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