最新記事

日本

『NHKから国民を守る党』はなぜ議席を得たのか?

2019年7月31日(水)13時15分
古谷経衡(文筆家)

東京・代々木にあるNHK本社社屋(イメージ) egadolfo-iStock.

<泡沫どころかギャグとさえ思ったN国党が、いささか時代遅れなNHK批判だけで議席を得てしまった。カメラの前で馬鹿なマネをして面白いことを言う人、というだけで実際に票を投じてしまう有権者が増えたせいか>

私は、いま、この国で異常なことが起こっていると思う。驚天動地の驚きである。

何よりもそれは、『NHKから国民を守る党』(以下N国、N国党)が参議院(全国比例)で1議席を獲得したことだ。当選したのは代表の立花孝志氏(51歳)。元船橋市議、前葛飾区議で、今次同党の全国比例で個人票を11万票以上を獲得している。N国党全体では約90万票以上を獲得し、社民党に次ぐ。

誰もが、N国党の政見放送でぶっ飛んだだろう。「NHKをぶっ壊す!」「不倫で、路上で、カーセックスですよ!」「さぁ、皆さん(NHK職員)もご一緒に!って言うわけないか(笑)」...もうただただ爆笑である。「普通」の人は、この政見放送を見て「爆笑しすぎてこれはヤバ過ぎる」と思い、そのまま放置する。N国は泡沫政治団体として、参議院では黙殺される―。

だれもがそう考えていた。私もそう考えていた。既存メディアも、一部を除くネットメディアもそう高をくくって黙殺していた。ところが、>N国は最後の比例代表の1議席に滑り込んだ。いま、この国で異常なことが起こっていると思う。...泡沫じゃん。誰がどう考えても。いや、そもそもギャグじゃん。みんなそう思うが、そうではなかった。なぜN国は議席を得たのだろうか?

1)私と立花氏の邂逅~1

順序を追って書く。私が立花孝志氏に最初に会ったのは、確か2011年。今から約8年前である。この時、立花氏は会社経営者のような立場で、自分で自分を撮影した手作りの動画で、NHK集金員を玄関先(事務所前)で撃退したり、それと前後して「NHKがいかに悪の組織であるか」という様なことを元NHK職員として「告発」するユーチューブ動画を作っていた。

更に、「NHKの内部告発」という内容で、週刊誌などにコメントが幾つか掲載されていた。しかし、総じて当時の氏は今でいうところのユーチューバーの走りである。

そんな彼となぜ私が邂逅したのかというと、同年、当時CS放送局であった(現在ではCS放送事業から撤退)日本文化チャンネル桜(東京都渋谷区)が主催するCSの討論番組に同席(共演)したことがきっかけだ。なぜ日本文化チャンネル桜は立花氏を討論番組に呼んだのか。

それは単純な話で、当時日本文化チャンネル桜はNHKに対して集団訴訟を行っており、NHKと法的にも、思想的にも鋭敏に対立した関係にあったからだ。だから同じくNHKを敵視する立花氏を「同胞」として迎えたわけである。

この日本文化チャンネル桜によるNHK集団訴訟は、2009年4月5日に、NHK総合で放送された『NHKスペシャル・ジャパンデビュー"アジアの一等国"』の内容に著しい偏向と事実誤認があるとして、日本文化チャンネル桜が盛んにCS番組内で呼びかけ、合計1万人強の原告団を結成してNHKを相手取り提訴したものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

和平計画、ウクライナと欧州が関与すべきとEU外相

ビジネス

ECB利下げ、大幅な見通しの変化必要=アイルランド

ワールド

台湾輸出受注、10カ月連続増 年間で7000億ドル

ワールド

中国、日本が「間違った」道を進み続けるなら必要な措
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 7
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 8
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 9
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 10
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中