最新記事

G20

実は成果に乏しいトランプ流恫喝外交、G20前にも見られたが...

2019年7月1日(月)10時30分
ロビー・グレイマー

CARL COURT-POOL-REUTERS

<日米安保条約やインドの関税政策、ドイツの国防支出を非難して大阪に乗り込んだトランプ。専門家の間には代償を指摘する声がある>

同盟国を公然と侮辱して譲歩を引き出そうとするのは、トランプ米大統領のお得意な行動パターン。この常套戦術は、大阪で開かれたG20サミットの前にも見られた。

日本を訪れる直前に日米安保条約が不公平だと毒づき(本誌38ページに関連記事)、インドの関税政策をツイッターで非難。ドイツの国防支出が不十分だとも述べた(写真は6月28日に大阪で会談したトランプと安倍首相、インドのモディ首相)。

【参考記事】日米安保見直しの可能性をトランプが示唆した今、これが日本の進むべき道だ

もっとも、トランプが大統領に就任して2年半の間に、こうした「いじめっ子作戦」が大きな成果を上げたとは言えない。

確かに、カナダ、メキシコとのNAFTA(北米自由貿易協定)の見直しは実現させたし(協定内容は大して変わっていないように見えるが)、NATO諸国に国防支出をいくらか増額させることもできた。メキシコ政府には、中米諸国からメキシコへの移民流入を抑制するために、南部国境に最大6000人の治安部隊を派遣すると表明させることに成功した。

しかし、それ以外の成果は乏しい。専門家の間には、強硬路線で目先の成果を手にできたとしても、長い目で見ればアメリカが代償を支払わされかねないとの指摘もある。

いま各国首脳は侮辱を聞き流してくれているが、やがてトランプが望むようなディール(取引)に応じなくなるかもしれない。脅しに屈したとみられれば、国内で支持を失う恐れもある。

「この戦術が交渉の環境づくりに有効だと、トランプは思っているらしい。他国の首脳を不安にさせることで交渉を有利に運べると期待している」と、元外交官でジョージタウン大学教授のナンシー・マケルダウニーは指摘する。「実際には、同盟国の不満が高まっている」

アメリカが同盟国の協力を必要とするときに、そのツケを払わされるのかもしれない。

From Foreign Policy Magazine

<2019年7月9日号掲載>

cover0709.jpg
※7月9日号(7月2日発売)は「CIAに学ぶビジネス交渉術」特集。CIA工作員の武器である人心掌握術を活用して仕事を成功させる7つの秘訣とは? 他に、国別ビジネス攻略ガイド、ビジネス交渉に使える英語表現事例集も。


ニューズウィーク日本版 Newsweek Exclusive 昭和100年
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月12日/19日号(8月5日発売)は「Newsweek Exclusive 昭和100年」特集。現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「非常に生産的」、合意には至らず プーチ

ワールド

プーチン氏との会談は「10点満点」、トランプ大統領

ワールド

中国が台湾巡り行動するとは考えていない=トランプ米

ワールド

アングル:モザンビークの違法採掘、一攫千金の代償は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 5
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 6
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 10
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 7
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 8
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 9
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 10
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中