最新記事

格差社会

富の8割強が2割の富裕層に集中 過去最長の景気拡大は格差を拡大

2019年7月4日(木)18時02分

サザビーズでは先月、印象派を代表する画家クロード・モネの油絵「積みわら」が1億1070万ドルで落札され、印象派の作品として過去最高を更新。写真は5月、ニューヨークのサザビーズで披露されたモネの絵画(2019年 ロイター/Lucas Jackson)

ロックバンド「ピンク・フロイド」のギタリスト、デビッド・ギルモアさんはこのほど、保有するギターのコレクションをクリスティーズで競売に掛け、このうちの1本「ブラック・ストラトキャスター」が約400万ドルで落札されてギターの落札額として過去最高を更新した。

サザビーズでは先月、印象派を代表する画家クロード・モネの油絵「積みわら」が1億1070万ドルで落札され、印象派の作品として過去最高を更新。サザビーズ自体が最近、著名起業家に37億ドルで身売りすることに合意した。

1日で121カ月と過去最長を達成した今回の米景気拡大期は、富の過剰と、超富裕層とその他の人々との格差のかつてない拡大が最も顕著な特徴かもしれない。

企業のM&A(合併・買収)から高級ペントハウスやスポーツチーム、ヨットなど個人の買い物まで、高額の売買案件は金額がますます膨らんでいる。根底にあるのは富裕人口の増加で、UBSによると米国では資産10億ドル以上の「ビリオネア」の数が昨年は607人と、2008年の267人から2倍以上に増えた。

UBSグローバル・ウェルス・マネジメントの富裕層向けサービス部門の責任者、ジョン・マシューズ氏は「金持ちはますます裕福になり、裕福化のペースも上がった。消費の勢いと欲望がとにかく大きくなった」と話す。

しかし低所得層には困難と停滞も見て取れる。連邦準備理事会(FRB)の2016年のデータによると、米国では富の88%が上位20%の富裕層に集中し、この比率は先の世界金融危機前から拡大した。半面、連邦政府のフードスタンプ(無料の食料クーポン)を受けている人の数は3900万人で、ピークだった2013年よりは少ないものの、08年との比較では40%増えた。この間の人口の伸びは8%程度にすぎない。

10年前にはこれほどの経済成長は不可能だと考えられていた。米国の金融システムはぜい弱で、人々は銀行の経営破綻が資本主義を永遠に弱体化させたのではと不安を抱いていた。金融政策当局は市場の安定と資産価格の押し上げに奔走し、所得と富の不均衡という問題には熱心には取り組まなかった。

今では、世界金融危機の前に見られた「超富裕」の兆しがいくつも再浮上している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米、高金利で住宅不況も FRBは利下げ加速を=財務

ワールド

OPECプラス有志国、1─3月に増産停止へ 供給過

ワールド

核爆発伴う実験、現時点で計画せず=米エネルギー長官

ワールド

アングル:現実路線に転じる英右派「リフォームUK」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中