最新記事

新型旅客機

次世代旅客機「フライングV」の開発をKLMオランダ航空が発表

2019年6月5日(水)17時00分
松岡由希子

燃料効率の高い次世代型長距離旅客機(C)Edwin Wallet, Studio OSO

<KLMオランダ航空とデルフト工科大学が燃料効率の高い次世代型長距離旅客機「フライングV」の開発を発表した>

KLMオランダ航空とデルフト工科大学(TU Delft)は、2019年6月3日、燃料効率の高い次世代型長距離旅客機「フライングV(Flying-V)」の開発について新たな協力協定を締結した。KLMオランダ航空のサポートのもと、今後数十年内での実用化を目指し、デルフト工科大学で研究開発がすすめられる。

客室や貨物室、燃料タンクを主翼に納める「フライングV」

長さ55メートル、幅65メートル、高さ17メートルの「フライングV」は、定員314名の客室と160立方メートルの貨物室、燃料タンクを主翼に備え、壮大なV字型をなしている。空力形状を改良して空気抵抗を低減させ、軽量化することで、エアバスの最新大型旅客機「A350」に比べて燃料消費量を20%軽減できるのが利点だ。機体は短いものの、翼幅は「A350」と同一であるため、搭乗ゲートや滑走路といった空港の既存インフラをそのまま利用できる。

客室や貨物室、燃料タンクを主翼に納めるという「フライングV」のコンセプトは、独ベルリン工科大学(TU Berlin)の博士課程に在籍するユストゥス・ベナド氏が2014年にエアバスでの論文プロジェクトで考案したもので、エアバスによってドイツ特許商標庁に特許出願されている。

Flying V, Presentation at TU Berlin -Justus Benad

二酸化炭素排出量を削減する取り組み

国際業界団体の航空輸送アクショングループ(ATAG)によると、世界の航空業界が排出する二酸化炭素量は2017年時点で8億5900万トンにのぼり、人為的な二酸化炭素排出量全体の約2%を占めている。

2018年10月には、KLMオランダ航空、アムステルダム・スキポール空港、デルフト工科大学ら、12の企業や団体が「オランダの航空業界からの二酸化炭素排出量を2030年末までに35%削減する」との行動計画をインフラ・水管理省のコーラ・ファン=ニューウェンハウゼン大臣に提出している。「フライングV」は、このようなオランダの航空業界全体の取り組みにも寄与するものとして期待が寄せられている。

これまで旅客機の客室は機体に配置されるが一般的だったが、主翼が客室となることで、より快適な空の旅を旅行者に提供できる可能性も広がっている。デルフト工科大学のピーター・ヴィンク教授は「飛行機の形状が変わることで、インテリアのデザインも変わる。旅行者の機内での新たな過ごし方についても探求していきたい」と抱負を語っている。

2019年10月には、アムステルダム・スキポール空港で開催されるKLMオランダ航空の創業100周年記念イベント「KLMエクスペリエンスデイ」において、「フライングV」の模型とともに「フライングV」のインテリアのプロトタイプが公開される見通しだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノルウェー政府系ファンド、投資先企業に温室効果ガス

ビジネス

午前の日経平均は続落、ハイテク株安重し 下値では押

ワールド

韓国中銀、予想通り政策金利据え置き 利下げスタンス

ビジネス

仏ケリングの第3四半期、予想より小幅な減収 グッチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 6
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 7
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 10
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中