最新記事

ドイツ

ドイツ有名ブロガー 偽のホロコースト体験談でタイトル剥奪

2019年6月6日(木)17時15分
モーゲンスタン陽子

ホロコーストにまつわる話題で一儲けしようと企んだのは、ヒングストが初めてではないようだ。ドイツ公共放送ドイチェ・ウェレは過去に起こったいくつかの事例をあげている。たとえば、ホロコーストを逃れオオカミの群れに育てられたという、実話として出版され世界的な大ベストセラーとなったある本は、のちに作り話であることが発覚し、そのベルギー人著者は裁判所より出版社への22億円の返還を命じられた。

ヒングストの罪

ヒングストの場合は法的な問題は発生していないようだが、それでも彼女の行いは罪深い。それはヤド・ヴァシェムを冒涜したことだけではない。

これほど多くの人を騙すほどに真実味に富み、説得力のある作品が書けたのなら、小説として出版する道もあったはずだ。だが、ブログという安易な手段を選んでしまったことと、その結果により、人々の間では「ブログにはやはり信ぴょう性がない」という声が上がっている。真面目にブログに取り組んでいる人にとっては甚だ迷惑な話だ。

さらに、タイミングを懸念する声も多い。現在、ドイツを含めヨーロッパではアンチセミティズム(反ユダヤ主義)が高まっており、つい先日もドイツ政府が、攻撃対象になることを避けるためにキッパー(ユダヤ伝統の男性用帽子)の着用を控えるよう呼びかけたばかりだ(このとき、扇情的な写真大衆紙としてふだんはあまり評価の芳しくないビルト誌が、切りとって使える紙のキッパーを掲載し、ユダヤ人との団結を示すために着用を呼びかけたことで高評価を得ている)。

ヒングストはユダヤ系ではなかったが、今回の捏造騒動がユダヤ人によるものと勘違いした人々や、ホロコーストはなかったとする歴史修正主義者たちに悪用されないように、注意する必要がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

仏ケリング、成長回復に店舗網縮小と「グッチ」依存低

ワールド

米、台湾への7億ドル相当の防空ミサイルシステム売却

ワールド

日中局長協議、反論し適切な対応強く求めた=官房長官

ワールド

マスク氏、ホワイトハウス夕食会に出席 トランプ氏と
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 10
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中