最新記事

宇宙開発

NASAがISSを民間利用に開放、費用はどのくらい?

NASA Wants Your Business On The International Space Station

2019年6月10日(月)16時44分
ヘイリー・プロコス

2018年10月、ロシアの宇宙船ソユーズから撮影した国際宇宙ステーション(ISS) NASA

<NASAの狙いは、「低軌道上の経済圏」を活性化して自らもそこから利益を得ることだ>

NASAは6月7日、民間企業に対して国際宇宙ステーション(ISS)の商業利用を認める方針を明らかにした。また、民間の宇宙飛行士のISS滞在も受け入れるという。

NASAは今後、製品開発や宣伝を目的とした民間企業によるISSの有償利用を認めるという。NASAの宇宙飛行士という人材や専門技術を含むISSのさまざまな「リソース」を商業目的で利用することも認める。また20年以降、民間企業が宇宙飛行士をISSに送り込むことも可能になるという。

7日の記者会見でNASAの代表者らは、NASAなどがさまざまなサービスを有償で調達できるような経済圏を低軌道(ISSが回っている軌道)上に築くことが長期的な目標だと述べた。このためにNASAは全予算の5%を割くという。

NASAは昨年、民間企業12社を選び、低軌道上における経済活動の将来性や宇宙旅行の需要喚起のために何が最も効果的かについて研究・評価をさせた。12社はISSから収益を上げる方法について議論を交わした結果、ISSのリソースを活用した製品開発やマーケティングを民間企業に認めることが、NASAの求める低軌道上の経済活性化につながると結論づけた。

ISSの利用が認められる活動は、NASAのミッションと関係があるか、低軌道上の経済活性化につながるか、無重力環境を必要としているかのいずれかだという。

また、民間宇宙飛行士のISS受け入れは年に2回、計12人程度に限定されるという。

幅広い創造性や発明の才に期待

宇宙旅行で滞在もできるが、費用は相当かかりそうだ。ISSまで飛ぶ「足」は民間企業で手配しなければならないし、滞在費も払う必要がある。

現時点では、スペースXやボーイングが開発中の新型宇宙船を利用する以外に選択肢はなく、「いくらに価格設定するかは両社しだい」だとNASAの最高財務責任者(CFO)であるジェフ・デウィットは言う。

参考までに、NASAが負担している宇宙飛行士1人当たりの打ち上げ費用は約8000万ドルで、何とかして5000万ドルまで減らそうと努力しているところだ。

滞在費については、1人につき1泊3万5000ドル程度を想定しているとデウィットは言う。

「(ISSを舞台に)創造性や発明の才を駆使し、将来的な収益につなげる方法を見つけ出すのは皆さん次第だ」と、NASAで有人探査を統括するビル・ジャーステンマイヤーは言う。

またジャーステンマイヤーはこうも述べた。「われわれは宇宙を商業活動に開放して民間企業から利益を得られるようにする方策を見きわめるための、民間との開かれた活発な対話を始める入り口にいる。これはどちらにとっても成長・学習体験になるだろう」

計画の効率を高めるため、NASAはISSの商業利用に関心を持つ企業などに対し、意見を求めている。

(翻訳:村井裕美)

【人気動画】ISS内の生活はどうなっているの?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏と28日会談 領土など和

ワールド

ナジブ・マレーシア元首相、1MDB汚職事件で全25

ワールド

ロシア高官、和平案巡り米側と接触 協議継続へ=大統

ワールド

前大統領に懲役10年求刑、非常戒厳後の捜査妨害など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 8
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中