最新記事

ドキュメンタリー

「地球は平面」と主張する人々が、丸い地球に出会ったら

Flat Earthers Disprove Themselves With Own Experiments in Netflix Documentary

2019年5月15日(水)21時00分
アンドリュー・ウェーレ

地球平面説運動がみずから仕掛けた罠にはまる場面を期待する人にとっては、満足のいく結末といえる。だがこの作品は、経験的な証拠が陰謀論者の信念を変える役に立たない理由がいくつもあることを示している。

「このことに対する信念が揺らいだら、人間関係はどうなるだろうか。そうすることにどんな利益があるのか? 一般の人たちはまた自分を歓迎してくれる? いや、気にもかけないだろう。でも、コミュニティで得た友人は? みんな失うことになるのか? そのとおり。突然、両方の社会で孤立する」と、心理学者のペール・エスペン・ストクネス博士は、ドキュメンタリーの中で語る。「それはアイデンティティの問題になる。この世界において自分は何者か。この問題に関する闘いを通して、自分を見つけることができる」

「もし自説を捨てようとしたら」と、ストクネス博士のコメントを受けてサージェントは言う。「仲間がきてそんなことはやめろと止めるだろう。だから捨てられない、もし捨てたかったとしても」

「そして突然、政府職員の大半が気候変動を信じないような事態になる」と、元NASA宇宙飛行士のスコット・ケリーは、反科学的な信念の現実的な危険について語っている。

サージェントは、地球平面説国際会議の講演で、支持者からの手紙を紹介した。「マーク、私の孫は12歳、10歳、8歳で、すべて第3世代の平面説支持者です」と彼は読み上げた。「学校で科学の先生が子供たちに地球が時速1600キロで自転しながら太陽の周囲を回っている、と言うと、クラスの約3分の1が一斉に叫んだのです。『それは違う』と」。

「平面説よ、永遠なれ」サージェントは演説を終え、観客は喝采する。

(翻訳:栗原紀子)

20190521cover-200.jpg
※5月21日号(5月14日発売)は「米中衝突の核心企業:ファーウェイの正体」特集。軍出身者が作り上げた世界最強の5G通信企業ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)。アメリカが支配する情報網は中国に乗っ取られるのか。各国が5Gで「中国製造」を拒否できない本当の理由とは――。米中貿易戦争の分析と合わせてお読みください。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中