最新記事

5G

「ファーウェイの5G」という踏み絵

The Huawei Challenge

2019年5月14日(火)18時21分
アシシュ・クマール・セン(米大西洋協議会)

その責任者とされたのが、ウィリアムソン国防相だ。彼は2月にイギリスの最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を南シナ海に派遣すると軽はずみな発表をして、中国政府の反発を買ったこともある。

アメリカと中国は、5Gネットワークの構築をめぐり競争を繰り広げている。次世代無線通信システムの5Gは、データ転送速度の高速化を可能にし、IoT(モノのインターネット)を通じて自動運転車やスマートシティに活用される。

ドナルド・トランプ米大統領と連邦通信委員会(FCC)は4月12日、5Gネットワークの展開を加速させるための幾つかのイニシアチブを発表した。「安定した5Gネットワークは間違いなく、21世紀のアメリカの繁栄と国家安全保障にとって欠かせないものとなる」とトランプは主張。「これはアメリカが勝たねばならない競争だ」

だがこの分野は、ファーウェイのような中国の通信企業が独占しそうな勢いだ。その理由は、これらの企業が提供する5G関連機器が安価なことにある。

取引する国には情報渡さない

米当局者たちは、ファーウェイの技術を採用した同盟国には、アメリカがこれまでのように機密情報を共有しなくなるリスクを負うと警告している。

マイク・ポンペオ米国務長官は2月にハンガリーを訪問した際、ヨーロッパ諸国がファーウェイとの取引を行う場合には、アメリカがヨーロッパで展開している一部の事業を縮小する可能性があると述べた。「通信網にファーウェイが存在することに絡むリスクについて知る必要がある」とポンペオは主張した。「もしもファーウェイの通信機器がアメリカの重要なシステムと同じ場所に設置されるなら、アメリカがそれらの国と連携するのは困難になる」

ファーウェイの技術がもたらすリスクについては、ワシントンで超党派の合意ができている。4月3日にワシントンで開かれたNATO設立70周年にちなんだ会議で、民主党のクリス・マーフィー上院議員はファーウェイの5G技術の例を挙げてこう発言した。「中国政府と直に連携している企業が我々のデータを自在に入手できると想像したら、みんな眠れなくなるはずだ」

「ロシアはオンラインでの挑発行為において、中国よりもずっとあからさまで積極的だが、中国の計画は、私たちの全データが流れるパイプごと手中に収めるという大がかりなものだ。私たちはそれを警戒しなければならない」とマーフィーは警告する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米との鉱物協定「真に対等」、ウクライナ早期批准=ゼ

ワールド

インド外相「カシミール襲撃犯に裁きを」、米国務長官

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官を国連大使に指名

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税の影響で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中