最新記事

イラン

米空母配備、イラン曰く「悪いのはボルトンだ」

U.S. Sends Warning to Iran by Deploying Carrier Fleet and Bomber Task Force

2019年5月7日(火)17時30分
シャンタル・ダシルバ

中東に配備される米空母エイブラハム・リンカーン REUTERS/U.S. Navy/Chief Mass

<米政府が言うイランの「挑発的行動」はイスラエルを攻撃した武装組織の支援か?>

アメリカのトランプ政権は5月5日、空母打撃群と爆撃部隊を中東に配備する予定だと発表した。イランによる「挑発的な行動が増えている」ためだという。

大統領補佐官のジョン・ボルトン(国家安全保障問題担当)は5月5日夜、ホワイトハウスが発表した声明のなかで、米空母エイブラハム・リンカーンを中心とする打撃群と爆撃部隊を配備する理由について、「アメリカや同盟国の国益に対する攻撃に対しては容赦ない軍事行動で対処する、というメッセージをイラン政府に対して明確に示すため」と述べた。

「アメリカは、イラン政府との戦争を求めているわけではない」とボルトンは述べた。「しかし、それが代理の組織によるものであれ、『イスラム革命防衛隊』(IRGC、イランの精鋭部隊)やイラン軍の通常部隊によるものであれ、私たちには十分な備えがある」

声明は、配備に至った詳しい理由には触れていないが、アメリカ政府とイラン政府のあいだの緊張は高まりつつあった。

トランプ政権は4月、イラン産原油の輸入を全面禁止すると発表(日本など一部の国・地域は5月まで適用除外)。イスラム革命防衛隊を国際テロ組織に指定した。アメリカが他国の国家機関である軍隊をテロ組織に指定したのはこれが初めてだ。イラン政府も対抗措置として、中東に派遣されているアメリカ軍全体をテロ組織に指定している。

数百人におよぶイランの国会議員は、アメリカ軍をテロ組織に指定する旨を述べた声明を出し、「中東の地で自らテロリストを組織し支援しているアメリカの指導者たちは、この不適切かつ愚かな行為を後悔することになるだろう」と述べた。

イスラエルの敵でもあるイラン

ボルトンが5日に声明を発表する直前には、パレスチナ自治区のガザで、イスラエルとパレスチナの軍事衝突が新たに発生している。イスラエル国内に着弾したロケット弾は、ガザを実効支配するイスラム組織ハマスや武装組織「イスラム聖戦」が発射したとされ、イスラム聖戦はイランの支援を受けているとみられている。

アメリカ国務長官マイク・ポンペオの秘書官が公表した記録によると、欧州歴訪のためにフィンランドへ向かっていた機内でポンペオは、ボルトンの声明について記者団から質問を受け、(空母を配備することは)「しばらく前から検討していた」と答えた。

ポンペオは、「イラン側の挑発がエスカレートしているのはまさに事実だ。同様に、アメリカの国益に対して攻撃が行われれば、イラン側に責任を取らせることになるのも事実だ」とした。また、「シーア派やフーシ派の武装集団だろうが、ヒズボラだろうが、第三者組織による(アメリカ国益への)代理攻撃があれば、私たちはイラン指導部に直接責任があるとみなす」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当

ビジネス

VWの米テネシー工場、組合結成を決定 南部で外資系

ワールド

北朝鮮が戦略巡航ミサイル、「超大型弾頭」試験 国営
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中