最新記事

LGBT

LGBTが多い住宅地の地価が高いのはなぜ?

Why Are House Prices Higher In LGBT Neighborhoods?  Carlo Allegri/REUTERS

2019年5月27日(月)15時45分
ダン・カンシアン

アメリカでも最もリベラルと言われる都市サンフランシスコの、ゲイ男性合唱団  Carlo Allegri-REUTERS

<LGBT地域の地価はその他の地域より2倍以上になることも珍しくない>

米大都市圏では、LGBT(性的少数者)の住人の割合が多い地区の不動産価格が大幅に上昇し、その他の地区のほぼ4倍にもなることがある――そんな現象が最近の調査で明らかになった。

不動産ウェブサイト「ジロウ(Zillow)」が公表した資料によれば、いわゆる「ゲイ地区」で不動産を購入しようとするなら、価格が割高になることを覚悟する必要がある。

アメリカ地域社会調査の定義によれば、ゲイ地区とは同性カップル世帯の割合が最も高いエリアのことだ。

オハイオ州クリーブランド市、ペンシルベニア州フィラデルフィア市、そしてカリフォルニア州リバーサイド郡では、LGBT集中地区に住むコストは、他の地区と比べて不釣り合いなほど高い。

クリーブランド近郊のリバーサイド地区は世帯の3.1%が同性カップルで、不動産の平均価格は平均22万1000ドル。クリーブランド圏全体の典型的な住宅価格より293.9%も高い。

フィラデルフィア市のロンバードとサウスステーション周辺エリアの物件は、同市内の他の地区より241.9%高い。

カリフォルニア州リバーサイド郡のなかでも、ウェスト・パームスプリングスにある物件の平均価格は、郡内の他の地区より233%高い。

ウェスト・バームスプリングスのLGBT世帯の割合は9.1%で、サンディエゴのノース・バンカーズヒル(10.1%)に次いで2番目に多い。不動産の平均価格は79万2400ドルで、サンディエゴ全体の住宅の平均価格より25%も高い。

誰であれ弱者には手が届かない

ニューヨークでも同様の傾向がみられる。ゲイの住人が多いマンハッタンのアッパーウェストサイドからウェストビレッジにかけての不動産の価格は、他の地区の典型的な住宅より平均して116.9%高い。

ジロウによると、同性カップルが多い地区の住宅価格が高くなりがちなのは、異性カップルよりも子供をもつ世帯が少なく、可処分所得が高い傾向があるためだ。

さらに、大規模なLGBTコミュニティのある土地には寛容で柔軟なイメージがあるため、テック関連の高給取りが集まり、地区全体が高級化する傾向が続いている。だが人気の高まりは逆の現象も引き起こしかねない。

「こうした地域はいまだにコミュニティとしての意識が強く、社会の受容性も高いが、住むとなると、多くの人には手が届かないほど高くつくことが多い」と、ジロウの経済調査責任者スカイラー・オルセンは言う。

「ゲイだけでなく、LGBTQと共通する立場にある白人以外の人々やトランスジェンダー、女性など、高収入を得る可能性が低い人々は疎外される可能性がある」

LGBT地区の住宅価格高騰は、新しい現象ではない。アメリカの住宅市場が急落した2012年には、LGBTの居住者が多い地域の不動産価格が平均して29%高くなる現象が全国でみられた。また、LGBT集中地域は、他の地区に比べて市場の復活ペースが速く、2017年にはLGBT地区の不動産価格は37%も割高になった。

逆に、同性カップル集中地区近辺の不動産が買いやすい値段に下がっている大都市も多い。ミズーリ州カンザスシティとテキサス州サンアントニオでは、LGBT集中地区の不動産の価格がそれ以外の地区より36%安くなっていた。LGBTが住む住宅地も二極化しているようだ。

(翻訳:栗原紀子)

20190604cover-200.jpg
※6月4日号(5月28日発売)は「百田尚樹現象」特集。「モンスター」はなぜ愛され、なぜ憎まれるのか。『永遠の0』『海賊とよばれた男』『殉愛』『日本国紀』――。ツイッターで炎上を繰り返す「右派の星」であるベストセラー作家の素顔に、ノンフィクションライターの石戸 諭が迫る。百田尚樹・見城 徹(幻冬舎社長)両氏の独占インタビューも。


ニューズウィーク日本版 Newsweek Exclusive 昭和100年
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月12日/19日号(8月5日発売)は「Newsweek Exclusive 昭和100年」特集。現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルで全国的抗議活動、ハマスとの戦闘終結求め

ビジネス

FRB、年内2回の利下げなお適切=サンフランシスコ

ワールド

欧州首脳、米ウクライナ首脳会談に同席へ ゼレンスキ

ワールド

米南部と中西部の共和党系3州がワシントンに州兵派遣
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 5
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 6
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 9
    40代は資格より自分のスキルを「リストラ」せよ――年…
  • 10
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中