最新記事

中国経済

中国版ナスダック「科創板」、規制撤廃でIPO方式一変 投資銀行は淘汰の時代へ

2019年5月9日(木)06時10分

4月25日、中国版ナスダックと称される「科創板」が、早ければ6月から上海証券取引所の一部として始動する。写真は上海で2016年撮影(2019年 ロイター/Aly Song)

中国版ナスダックと称される「科創板」が、早ければ6月から上海証券取引所の一部として始動する。新規株式公開(IPO)の方式が一変するため、価格設定や投資家への販売などで従来は必要なかった独自の裁量や工夫が求められる投資銀行業界では、戸惑いが広がっている。

これまでのIPOは、プライシングに関する当局の指針によってバリュエーションが抑えられ、投資銀行は簡単に買い手を見つけられた。ある投資銀行家は「以前ならIPOで株式を売るのは楽だった。これからは関心を持つ投資家を見つけ出し、上場企業や属する業界の将来性を語る必要が出てくる。時間がかかるし、費用もかさむ」とこぼした。

投資銀行業界が不安を感じているのは、中国の幅広い資本市場改革の一環として科創板に試験導入されるIPOの登録制度だ。業界は、当局の定めた指針に従って粛々と手続きを進めることに慣れきっていたが、登録制になれば香港やニューヨークなどと同様にプライシングを巡って利害が相反することが多い上場企業と投資家それぞれと話し合った上で着地点を探らなければならない。

国金証券(上海)のマネジングディレクター、Chang Houshun氏は「われわれにとって非常な難題だ」と語り、以前のIPO引き受けは「機械的」に行っていたと付け加えた。

科創板のIPOでは企業の質やタイミングに関連した政府の規制は撤廃され、まだ黒字化していない新興企業の上場が可能になる。また非公式ながらも慣例化していた公開価格の上限規制も廃止される。

こうした制約がなくなるので、中国の投資銀行は西側の同業者のように企業の成長力やリスク、ならびに市場環境などを勘案してIPO価格を設定することが必須となる。

Chang氏は、根本的なルール改正によって投資銀行業界の再編や淘汰が加速し、中国版のゴールドマンやシティ、JPモルガンが登場してくる公算が大きく、強力な4-5行以外に生き残れる銀行はそう多くないだろうとみている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中