最新記事

中国経済

中国版ナスダック「科創板」、規制撤廃でIPO方式一変 投資銀行は淘汰の時代へ

2019年5月9日(木)06時10分

スキルアップ

投資銀行業界では、IPO方式変更への不安や新規案件を獲得しようという意欲を背景に、スキルアップを急ピッチで進める動きが見られる。

科創板は、香港やニューヨークと異なり引き受け金融機関がリスクを共有してIPO株の2−5%を保有することが義務付けられているため、資本基盤を拡充している投資銀行も多い。

申万宏源集団は、投資銀行部門を再編して業界別チームを立ち上げ、ハイテクやヘルスケアなどのセクターの専門家を育成する構えだ。同時に香港への上場を通じて11億6000万ドルを調達している。引き受け部門のマネジングディレクター、Tu Zhengfeng氏は「われわれはグローバルな投資銀行の構造に向かって進んでいる。企業の本源的価値をつかむことの重要性が増しており、そのための専門性が求められている」と説明した。

またこれまでの中国のIPOで形式的なイベントにすぎなかった投資家向け説明会について同氏は、当該企業の株をなぜ買う必要があるか、価格はどのように決まったなどをしっかり伝えなければならなくなったと強調した。

中信建投証券のZhao Jun氏は、投資銀行は特にハイテクセクターのIPO候補企業を掘り当てるために情報ネットワークを強化することも求められるとの見方を示した。

過熱リスク

上海証券取引所幹部のPeng Yigang氏は、上場申請企業や投資銀行の間に不安が広がっていることを認めた上で、多くの関係者からIPOについて取引所側に何が適切なのか答えをくれとの問い合わせがあるが、登録制の下でそれを決めるのは市場だと述べ、理解を求めた。

科創板に上場を申請した企業は既に100社近くに上る。

それでも、当局が少なくとも科創板が始まってしばらくの間、IPOに関して指針を出すのを完全にやめるのかどうか懐疑的な声も多い。予定売り出し額を応募額が大きく上回り、バリュエーションが高騰して市場が過熱化するリスクがあるからだ。

かつて設立された創業板(チャイネクスト)も、滑り出しで投機による相場急伸が起こった挙句、その後急落して投資家心理を冷え込ませて二度と回復せず、新興企業の上場を後押しする試みとしてはほぼ失敗に終わった経緯がある。

上海証券取引所の元チーフエコノミストは「海で泳ぐ前にはプールで泳ぎ方を習わなければおぼれてしまう」と語り、いきなり投資銀行の全面的な裁量に任せることに懸念を示した。

(Samuel Shen記者、Julie Zhu記者)

[上海/香港 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 トランプの大誤算
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年4月14号(4月7日発売)は「トランプの大誤算」特集。国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米軍がホルムズ「掃海」とトランプ氏、イランTVなど

ワールド

米・イラン交渉団、パキスタン首相と個別に会談 和平

ワールド

バンス米副大統領、パキスタンのシャリフ首相と会談

ワールド

米が資産凍結解除に同意とイラン筋、米当局者は否定
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 5
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 6
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 7
    中国が恐れる「経済ドミノ」
  • 8
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 9
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 7
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中