最新記事

EU

欧州議会選、親EU勢力内で明暗分かれる 極右の懐疑派は伸び悩み

2019年5月27日(月)10時00分

5月26日、同日までに実施された欧州連合(EU)欧州議会選で、EUの強化を訴える勢力が3分の2の議席を堅持したことが公式推計で明らかになった。写真は議会第1会派の中道右派・欧州人民党(EPP)のウェイバー候補(右)。ブリュッセルで撮影(2019年 ロイター/Yves Herman)

26日までに実施された欧州連合(EU)欧州議会選で、EUの強化を訴える勢力が3分の2の議席を堅持したことが公式推計で明らかになった。ただ、現在大連立を組む二大会派は過半数割れとなった一方で、反EUの極右およびナショナリズム勢力が議席を大きく伸ばした。

議会第1会派の中道右派・欧州人民党(EPP)は179議席、大連立を組む中道左派の欧州社会・進歩連盟(S&D)は152議席をそれぞれ確保したが、合計で過半数には届かなかった。一方、親EU勢力のなかでもリベラル会派は36議席増の105議席、緑の党は17議席増の69議席となった。また、極右の2会派は111議席と、前回2014年の議会選から40%増えた。

フランスの欧州議会選ではルペン党首率いる反EUの極右、国民連合(RN)が得票率24%と、マクロン大統領の与党、共和国前進(REM)の22%を上回り、国内第1党となる見通しであることが出口調査で示された。ただ、緑の党が第3党となったことから親EU勢力が依然過半数を占めた。

REMには中道左派や中道右派から支持が流れたため、EUレベルではリベラル会派が議席を伸ばした。環境政党の緑の党も大幅増となったことから、親EUの4会派全体では、失った議席は20議席弱にとどまり、751議席のうち505議席を確保した。

それでもなお、EPPとS&Dの大連立が過半数割れとなったことで、議会の一部プロセスが複雑化する可能性がある。100議席超の勢力となったリベラル会派と70議席前後を掌握した緑の党は発言権拡大を求めるとみられる。

そうなれば、次期EU指導部は環境規制や多国籍企業への課税、貿易相手国への環境面での協力要請などを強化する可能性がある。

一方、フランスのルペン氏やイタリア与党の極右「同盟」率いるサルビーニ副首相などEU統合の強化に反対する勢力はもくろみが外れた格好となった。

ブリュッセルに本部を置くシンクタンク、ブリューゲルの責任者、グントラム・ウルフ氏は「重要なのは、極端な政策を掲げる勢力はそれほど議席を伸ばさなかったということだ」と指摘した。

ルクセンブルクのベッテル首相はツイッターに「欧州の勝利だ。投票率は非常に高く、親EU政党が最も強い」と投稿した。

欧州議会選の投票率は51%と、前回2014年の43%を大きく上回った。1979年の最初のEU規模の直接選挙以来、投票率が初めて上向いた。

ドイツではメルケル首相の保守連合の得票率が前回から7%ポイント低下した一方、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が4%ポイント上昇して11%となった。また、緑の党が前回から2倍近い21%を獲得し、第2党に躍進した。

英BBCによると、同国ではナイジェル・ファラージ氏率いるブレグジット党が勝利する見通し。

[ブリュッセル 26日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 ジョン・レノン暗殺の真実
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月16日号(12月9日発売)は「ジョン・レノン暗殺の真実」特集。衝撃の事件から45年、暗殺犯が日本人ジャーナリストに語った「真相」 文・青木冨貴子

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中