最新記事

新兵器

6枚の刃で切り裂く米極秘暗殺兵器「ニンジャ爆弾」

What Are Ninja Bombs? Pentagon's New Secret Missiles Kill Target With Blades

2019年5月13日(月)15時00分
デービッド・ブレナン

従来のミサイル攻撃では、周囲の民間人も巻き添えになることが課題だった(写真は2013年の米無人機MQ-1プレデター) REUTERS/U.S. Air Force

<米政府は恐るべき正確さで標的だけを殺害するミサイルを開発し、テロリストの暗殺に使ってきた>

アメリカ政府は、「重要なターゲット」を高い精度で仕留めるための特殊兵器を開発し、実戦に使用してきたことが明らかになった。

ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によれば、米国防総省とCIAが開発した新型ミサイルR9Xは、車両や建物のなかにいるテロ幹部などの標的を、周囲の民間人を巻き添えにすることなく殺害するために使用されている。

R9Xは1985年から実戦配備されている小型の空対地ミサイル「ヘルファイア」の変種で、爆薬は搭載されていない。代わりに弾頭には6枚の長い刃が取り付けられ、目標到達寸前に開く仕組みだ。標的は、猛烈なスピートで飛ぶ重量45キロのミサイル本体の衝撃、あるいは着弾寸前に開く刃で引き裂かれて死ぬことになる。

アメリカはこれまで、爆発による巻き添え被害を回避する兵器としてコンクリート爆弾を使用してきた。弾頭から爆薬を抜いてコンクリートを詰めたもので、ミサイル自身の運動エネルギーで標的を殺害する設計となっている。R9Xには長刃が追加されており、設計上の進化を示している。

使用は特殊な状況のみ

ウォール・ストリート・ジャーナルは、この兵器の詳細とそれが実戦に使用された事実を多数の現役および元関係者への取材で確認した。R9Xの開発は2011年に始まり、長い刃がついていることから関係者には「空飛ぶ包丁セット」や「ニンジャ爆弾」の通称で知られている。

当局者によれば、R9Xが使用されるケースはごくまれで、巻き添え被害の危険が大きい場所にテロ幹部などの重要なターゲットがいる場合など、特殊な状況に限られる。これまで米軍はR9Xをリビア、シリア、イラク、イエメン、ソマリアなどで6回ほど使用しているという。

パキスタンのアボッタバードにある隠れ家にいた国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンを急襲する際も、R9Xの使用が次善の策として検討されていた。

R9Xの開発が促進されたのは、バラク・オバマ前大統領が米軍の空爆による巻き添え被害の軽減を軍に要請したため。アメリカは東アフリカから南アジアまで長期間にわたる空爆作戦を展開しており、誤爆や民間人の被害が問題となっていた。R9Xは、ターゲットが攻撃を避けるために民間人の集団を「人間の盾」にしている場合にも、攻撃の選択肢になりうる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州評議会、ウクライナ損害賠償へ新組織 創設案に3

ビジネス

米雇用、11月予想上回る+6.4万人 失業率は4年

ワールド

ハセット氏、FRBの独立性強調 「大統領に近い」批

ビジネス

米企業在庫9月は0.2%増、予想を小幅上回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中