最新記事

環境

「人間の肥料化」が合法化されそう、何それ?

Wash. Might Be 1st State to Legalize Human Composting

2019年4月24日(水)16時30分
キャサリン・ハイネット

野菜くずから肥料を作る施設(中国山東省) REUTERS

<墓不足や環境への配慮から、「グリーン埋葬」にこだわるアメリカ人が増えている>

ワシントン州のジェイ・インズリー知事がもし、「人体堆肥化(人間の遺体の堆肥化)」を合法化する法案に署名すれば、アメリカの歴史に名を残すかもしれない。インズリーは2020年大統領選で民主党の指名獲得を目指す候補のひとりであり、気候変動対策を選挙戦の目玉に位置づけている。

火葬や従来の埋葬に代わる環境にやさしい選択肢と宣伝されてきたこの法案は、2019年5月に発効する見込みだ。法案の支持者たちは、この埋葬方法により、環境志向の選択肢を提供し、葬儀業界に革命を起こせると期待されている。では人体堆肥化とは、いったいどういうものなのか? どのような仕組みなのだろうか?

このコンセプトが注目を浴びる大きなきっかけをつくったのが、人体堆肥化の非営利組織(NGO)「アーバン・デス・プロジェクト」と、公益会社「リコンポーズ(Recompose)」を立ち上げた起業家で建築家のカトリーナ・スペードだ。

スペードの狙いは、遺体が埋められたあとに起きる自然の分解プロセスを、従来の埋葬のような広い土地を使わずに再現することにある。AP通信によれば、リコンポーズは既存の農業技術に発想を得て、木のチップや牧草やわらの助けを借りて、人間の遺体を「やさしく」土に還すことを目指しているという。

細菌の力を引き出す

具体的には、遺体を大きな円筒形の容器に入れ、前述のような有機物で覆う。酸素供給量を制御して分解を加速させれば、遺体は数週間で、約0.76立方メートルの堆肥になると、NBCは伝えた。

ワシントン州立大学の研究チームは2018年、小規模な試験プロジェクトを実施し、献体された遺体7体でこのプロセスをテストした。

「ワイアード」が2016年に伝えた初期の設計は、複数の遺体が大きなサイロ状構造のなかを通過しながら、分解が進むに従って地面に近づいていくというもの。この多層階式の「リコンポジション(堆肥化)センター」は複数の遺体を収容でき、遺体は木のチップで仕切られる設計だった。

スペードは2018年11月、ライフスタイル・メディア「マインド・ボディ・グリーン」でこの人体堆肥化プロセスを説明した際に、次のように述べている。「要は、自然に本来の仕事をさせるのが私たちの仕事だ。細菌が繁殖しやすいよう環境を整え、木のチップなどの炭素に富んだ材料と水分を使って遺体を分解しやすくする」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

バイデン氏、建設労組の支持獲得 再選へ追い風

ビジネス

米耐久財コア受注、3月は0.2%増 第1四半期の設

ワールド

ロシア経済、悲観シナリオでは失速・ルーブル急落も=

ビジネス

ボーイング、7四半期ぶり減収 737事故の影響重し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 2

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 3

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」の理由...関係者も見落とした「冷徹な市場のルール」

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 6

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    コロナ禍と東京五輪を挟んだ6年ぶりの訪問で、「新し…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中