最新記事

スーダン

独裁去ってまた独裁? バシル政権崩壊のスーダンで次に起こること

2019年4月22日(月)11時05分
ロビー・グレイマー、ジャスティン・リンチ、コラム・リンチ、ジェフコート・オドネル

軍高官を取り囲み、軍主導の移行政権に抗議するスーダンのデモ隊 REUTERS

<ダルフール紛争のあったスーダンで30年に及ぶ強権支配がクーデターで終結した。しかし、軍部による移行政権の宣言にデモ隊は拒否反応を示している>

約4カ月間の大規模反政府デモの果てに、スーダンで30年に及ぶ独裁支配を続けたバシル大統領(75)が、軍部のクーデターによって失脚した。だが、軍が2年間の移行政権を運営するとの宣言に、市民は早くも拒否反応を示している。

軍を率いるイブンオウフ国防相は4月11日、国営テレビで演説。バシルを解任、拘束したと発表した。バシルには2009年、ダルフール紛争での人道に対する罪などで、国際刑事裁判所(ICC)が逮捕状を発付している。

首都ハルツームでは、勝利に沸くデモ隊がバシルの肖像を破り捨てていた。ただ、4月11日がスーダン民主主義の始まった日と記憶されるのか、あるいは独裁去って新たな独裁が始まった日になるのかは分からない。

イブンオウフは軍が移行政権を2年間運営した後に大統領選挙を実施すると話したが、詳細は明らかにしなかった。イブンオウフ自身、ダルフールの関係者の1人として、アメリカの制裁対象に指定されている人物だ。

「全く歓迎されないリサイクルのクーデターだ」と、デモを主導してきたスーダン専門職組合(SPA)の広報サラ・アブデルガリルは言う(バシルも1989年の無血クーデターで政権を握った)。イブンオウフの宣言は、「平和かつ無条件の政権交代と、市民による暫定政権を求める国民の期待からは程遠い」。

デモ隊は、抗議活動が最終局面に達するまで軍に協力を求めるのを避けていた。「各勢力はまるで、当面の内戦さえ避けられればいい、というレベルで合意を結んだように見える」と、米タフツ大学世界平和財団のアレックス・デワールは言う。

国際法廷で裁かれる日

反政府デモに加勢した兵士らが沈静化するかは不透明だ。12日にはイブンオウフが移行政権トップの座を別の軍高官に譲るなど、事態は流動的。「野党勢力はリーダーシップに欠けているため、この機に政権を狙えるような政治家も政党も存在しない」と、米バッサー大学のザカライア・マンピリー教授(政治学)は言う。「だからこそ軍部がこの空白を独占できている」

アメリカの姿勢も問われる。アメリカはスーダンをテロ支援国家に指定し、経済制裁を科しておきながら、同時に諜報活動や対テロ戦争で安全保障関係を結んでもいた。オバマとトランプ政権下では、スーダンとの関係修復も進められた。

米政府はバシルの対米協力姿勢や人道支援での譲歩を評価し、2017年には経済制裁を解除。ここ数カ月は、テロ支援国家指定の解除も検討されていたという。クーデターを受けて米政府は、関係正常化交渉を停止すると表明した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、来週にもベネズエラ制裁さらに解除=ベセント氏

ワールド

吉村・維新の会代表、冒頭解散「驚きない」 高市氏と

ワールド

イラン当局、騒乱拡大で取り締まり強化示唆 ネット遮

ビジネス

決算シーズン幕開け、インフレ指標にも注目=今週の米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画をネット民冷笑...「本当に痛々しい」
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 7
    決死の嘘が救ったクリムトの肖像画 ──ナチスの迫害を…
  • 8
    美男美女と話題も「大失敗」との声も...実写版『塔の…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 8
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 9
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中