最新記事

日本社会

平成から令和へ 3世代が語る日本の歩み「過去と未来」

2019年4月30日(火)10時00分

写真左はシステムエンジニアとして働いていた山一証券が破綻後、ラーメン店を開業した52歳の齋藤賢治さん、中央は19歳の大学生、原田百合さん。左は戦争を体験した82歳の二瓶治代さん。すべて4月撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung-hoon/Issei Kato)

「平成」の31年間は、バブル後の景気低迷、大規模な自然災害、ITの進化、そして、日本が一度も戦争をしなかった時代として語られることが多い。

では、国民一人一人は、どのような喜びや悲しみ、不安を感じたのだろうか。ロイターは、異なる3つの世代へのインタビューを通して、平成がどのような時代だったのか検証した。

戦争体験

82歳の二瓶治代さんは、何十年間も戦争の記憶を封じ込めていた。母子が生きたまま空襲の炎に焼かれ、自分自身も逃げようとした人たちの死体の下敷きになり、妹の体には火傷にウジ虫がわいていた。思い出すのも辛い記憶だ。

しかし、第2次世界大戦の終結からほぼ60年、天皇陛下の即位から13年が経った2002年、彼女は戦争体験を語ろうと決めた。約10万人が犠牲となった1945年3月10日の東京大空襲について伝える戦災資料センターを訪れたことが、きっかけとなった。

戦争末期に8歳だった自分の経験を話すことによって、二瓶さんは、平和な時代しか知らない今の子どもたちに戦争の恐ろしさを伝えることができるのではないかと考えている。

「今の子どもたちは、戦争を全く知らない。それは素晴らしいことだけど、日本が70数年前まで戦争をしていた、その時のことを知らないと、また間違った道に行ってしまうんじゃないか、そういうことは常に思っている」と二瓶さんは、ロイターのインタビューで述べた。同センターで開催された子どもたちに戦争体験を語る会に参加するところだった。

現在の天皇陛下にとって、戦争の悲劇を忘れないようにすることは、最優先の使命だった。戦争では、兵士たちが天皇陛下の父、昭和天皇の名の下に戦い死んでいった。

二瓶さんは、天皇陛下が戦没者慰霊のため、数々の戦地を巡礼されてきたことを感謝し「サイパンに行かれた時の天皇、皇后両陛下の後姿がテレビに映ったのを見て、昭和天皇の犯した罪を彼らが本当に申し訳なかったと思ってらっしゃる、それが出ていて感動しました」と話す。

ただ、今の子どもたちにとって、今後ますます戦争が遠い世界の話になっていくのではないか、と二瓶さんは危惧している。「過去をしっかり勉強して、それを未来につなげてもらいたい」と彼女は言った。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米ディズニー、第4四半期売上高は予想に届かず 26

ワールド

ウクライナ、いずれロシアとの交渉必要 「立場は日々

ビジネス

米経済「まちまち」、インフレ高すぎ 雇用に圧力=ミ

ワールド

EU通商担当、デミニミスの前倒し撤廃を提案 中国格
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 6
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 7
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中