最新記事

ロシア

ロシア、新しい靴を買えない家庭が3割強、それを「理解できない」大統領報道官

2019年4月12日(金)15時54分
松丸さとみ

サンクト・ペテルブルグのマーケット 2018年 Max Rossi-REUTERS

<ロシア連邦統計局の調べで、ロシア生活の現状が明らかになったが、これを聞いた大統領報道官が、「理解できない」と発言して問題に......>

新しい靴を買えない家庭3割強、地方では下水もない

ロシアでは、3家族のうち1家族は新しい靴さえも買えないほど貧困にあえいでいるということが、このほどロシア連邦統計局の調べで明らかになった。しかしこれを聞いた大統領報道官が、「この数値はどこからきたんだ?」といぶかしげに記者に聞き「理解できない」と発言したため、外国メディアは「庶民の現実を把握していない」と指摘している。

この統計は、ロシアの生活水準を調べるために2011年以来、年に2回実施されているもの。今回は2018年9月にロシア全土で6万世帯を対象に調査が行われた。

ザ・タイムズ紙によると、統計局が発表した数値は、ロシアの家庭のうち35.4%は1シーズンに靴1足しか持てないほど貧しいというものだった。また、家計のやりくりが苦しいという家庭は79.5%に上った。年に1週間以上の旅行(友人や家族の家に滞在する場合も含む)に行かれると答えた家庭は約半数だった。

また英公共放送BBCは、肉か魚を毎日ではなく1日おきにしか食べられないと答えた家庭は10%に上り、12.6%の家でトイレは共同か屋外にしかないと答えたと報じている。

さらに都市部を除く地方で限定すると、38%が屋外トイレしかなく、下水がまったく完備していない世帯の割合は約20%に達した。

自国の貧困を信じられない?大統領報道官

ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は記者とのブリーフィングでこの統計について、「ロシア政府はこのデータを理解するのに苦労している」と打ち明けた。「なんで靴なんだ?なんで3家族のうち1家族?この数値はどこから来たんだ?」と記者に問いかける一幕もあった。さらに、統計局に説明してもらいたいとも加えたという。

ザ・タイムズは靴の項目について、「ロシアは季節によって寒暖差が大きいため何足か靴を持っている必要がある。(たとえば)モスクワは降雪、豪雨、猛暑になることもあり、気温はマイナス25度からプラス35度と幅広い」と説明している。

ロシアの英字日刊紙モスクワ・タイムズによると、ロシア連邦統計局はこの調査について、「妥当な生活や貧富」に関する回答者の考えを主観的に反映したものだと説明。統計には総体的に考慮されるべき要素がいくつかあり、靴の項目もその1つだとしている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド

ビジネス

米、エアフォースワン暫定機の年内納入希望 L3ハリ

ビジネス

テスラ自動車販売台数、4月も仏・デンマークで大幅減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中