最新記事

貿易戦争

対中貿易戦争か国内経済か......トランプに決断の時が迫る

2019年3月30日(土)14時30分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

互いに国内世論が気になるトランプと習(右)が手打ちする日は近い?(17年11月) Damir Sagorj-REUTERS

<米政権内は対中交渉をめぐって対立しているが、再選を目指すトランプは交渉妥結を必要としている>

トランプ米大統領にとって、貿易は常に単純なものに見えていた。アメリカが赤字を出している貿易相手国、特に最大の悪役である中国を罵倒することは16年の大統領選挙当時、中西部の工業地帯で有権者の心をつかむ格好の手段だった。

実際、ウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルベニア州などでは有権者が予想外にトランプに味方した。自らの直観と感性が認められ「私は貿易のおかげで勝った」と、彼は選挙を戦った盟友に語っていた。

ただ、トランプが理解していなかったのは、貿易問題は複雑ということだった。ビジネスマンであり、自称・すご腕交渉人のトランプは、主要な貿易相手国に関税を課すことを交渉で利用できると考えていた。

トランプは中国だけではなく、カナダや日本、韓国、EUなどの同盟国にも関税を押し付けた。だが共和党を支持する投資家たちは、トランプの減税と規制緩和策は好んだが、貿易紛争は嫌がった。

調査会社IHSマークイットの分析が示すように、貿易戦争が新聞の見出しになると市場はひどく弱気になり、解決が見えてくると強気になる。

トランプは関税を武器にしているが、同時に株価の動向も気にしている。政権内のある経済顧問によれば、「トランプは、貿易戦争をしながら同時に株価を上げることはとても難しいと気が付いた」。

トランプと中国の習近平(シー・チンピン)国家主席との会談は2月から幾度も延期され、現時点では6月との見方もある。だがトランプの決断の時はいつか必ずやって来る。

政権内には貿易政策をめぐって対立があり、中国との交渉内容はいまだに議論が続く。ローレンス・カドロー国家経済会議(NEC)委員長は先日、政権の経済顧問の意見は一致しているとテレビ番組で主張したが、事はそれほど単純ではない。

重要なのは失業率と株価

カドローは貿易問題では比較的ハト派であり、中国との合意はなるべく早いほうがいいと主張している。

だが米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表は、アメリカは現在の交渉案よりも有利で包括的な取引ができると考えており、大統領に忍耐を求めている。ライトハイザーはさらに、時間はトランプの味方だと主張している。米経済は比較的堅調に推移しているが、最近の多くのデータによると中国経済は低迷している。習は国内の政治的圧力を受けており、トランプ以上に交渉妥結を必要としていると、ライトハイザーは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は反落、短期過熱感を嫌気 日米交渉へ

ワールド

豪住宅価格は6月も最高更新、利下げ効果で5カ月連続

ビジネス

農業を犠牲にしない、安心して再生産できる環境重要=

ワールド

アングル:アマゾン販売の中国製品がCPI上回る値上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中