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トルコ

アルメニア語でツイートしたトルコ大統領の胸算用

2019年3月23日(土)16時30分
クリスティナ・マザ

エルドアンは1915年の事件はジェノサイド(集団虐殺)ではないと主張してきたが、昨年に発表した声明ではアルメニア人の犠牲者に哀悼の意を表している。「トルコはその良心と道義的責任に鑑み、アルメニア系市民の歴史的な苦痛に共感を寄せる」

これについても懐疑的な見方がある。「トルコのキリスト教徒に最大の影響力を持つアルメニア教会を味方に付ければ、国内外で自分に対する評価が変わると思っている」と、アルメニア人のトルコ研究者バルジャン・ゲガミアンは手厳しい。「しかもエルドアンはオスマン帝国の皇帝に自分をなぞらえたがる。イスラム教徒だけではなく、キリスト教徒をはじめ多様な臣民の支配者を気取りたいのだろう」

トルコとアルメニアは今も正式な国交を結んでいない。両国の国境は封鎖され、主にロシア兵が警備に当たっている。

1915年の事件はとげのように両国間に突き刺さったままだ。アルメニアはジェノサイドと認めるようトルコに要求しているが、トルコは「根拠なし」と突っぱねている。エルドアンが国内のアルメニア系の懐柔をもくろんでも、アルメニアとの真の和解はまだまだ遠そうだ。

<本誌2019年03月26日号掲載>

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