最新記事

米中関係

トランプと習近平の米中ディールは、そう簡単にまとまらない

2019年3月9日(土)14時40分
キース・ジョンソン

ホワイトハウスで中国代表団と会談するトランプ(1月31日) Jim Young-REUTERS

<貿易問題での歩み寄りにトランプは楽観的だが、合意への道はまだ険しく妥協すれば強硬派が黙っていない>

米朝の次は、米中だ――。

トランプ米大統領は3月中に予定される米中首脳会談で、貿易問題の重要な「ディール」に署名する準備を始めているようだ。しかし北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)党委員長との会談のように、物別れに終わる恐れはないのだろうか。

過去数カ月にわたる交渉で米中両国がどこまで歩み寄ったのかは、正確には分からない。トランプは合意に「非常に近づいている」と語っているが、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は2月27日、合意には「まだ多くの作業が必要」で、合意に達したとしても「やるべきことは数多くある」という認識を示した。

しかし翌日には、米国家経済会議のカドロー委員長が「歴史的」な合意に向けて大きく前進していると発言。中国が経済に対する政府の介入を抑制することを約束する可能性にまで言及した。だがその直後、今度はムニューシン財務長官が「まだ合意に達したわけではない。大きな進歩は見られるが」と、抑えた調子のコメントを発して火消しを試みている。

問題の1つは、米政権が小さな成果を大げさに喧伝しがちなこと。米韓自由貿易協定(FTA)を少し手直ししただけで全く新しい協定に合意したかのように胸を張り、NAFTA(北米自由貿易協定)を若干見直して歴史的快挙と触れ回る。

米中間の最大の課題は、中国が構造改革にどこまで応じるかだ。米政府は昨年以来、中国に経済運営の根本的変革を迫ってきた。国の介入の抑制や知的財産権の保護、新市場の開放、半導体や人工知能(AI)といった成長産業での国を挙げた育成策の見直しなどだ。

中国が20年も続けてきた経済姿勢をアメリカが正すことができないとすれば、トランプ以前の4つの政権を悩ませてきた問題に3カ月しか取り組んでいないことに原因があるだろう。

問題のさらに根源にあるのは、中国経済の構造問題かもしれない。特に習近平(シー・チンピン)国家主席は就任から6年の間、権力基盤を固め、経済への政府の関与を強める一方だった。

ファーウェイも交渉カード

仮に今度の会談で米中が合意に達したとしても、貿易戦争が完全に終結するわけではない。トランプは中国への追加関税の猶予を決めたが、数千億ドル分の中国製品には10%の関税が今も課されている。その一方で、アメリカの農産品を対象にした中国の報復措置も解除されていない。貿易戦争で打撃を受けているアメリカの業界関係者は、今後も痛みを感じ続ける。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:解体される「ほぼ新品」の航空機、エンジン

ワールド

アングル:汎用半導体、供給不足で価格高騰 AI向け

ワールド

米中間選挙、生活費対策を最も重視が4割 ロイター/

ワールド

ロシア凍結資産、ウクライナ支援に早急に利用=有志連
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...装いの「ある点」めぐってネット騒然
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月29日、ハーバード大教授「休暇はXデーの前に」
  • 4
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 5
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 6
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 7
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 10
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中