最新記事

米朝会談

米朝「物別れ」を中国はどう見ているか? ──カギは「ボルトン」と「コーエン」

2019年3月4日(月)13時15分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

ハノイでの米朝拡大会議に突如姿を現した超タカ派のボルトン大統領補佐官(左端) Leah Millis-REUTERS

2回目の米朝首脳会談が物別れに終わった。米側は北朝鮮側が全面的な制裁解除を求めたからだと言い、北朝鮮は一部解除しか求めていないと反論。これを中国はどう見るか。朝鮮半島問題に詳しい、中国政府元高官を取材した。

米朝で食い違う物別れの理由

2月27日から28日にかけて華々しく行なわれるはずだった米朝首脳会談は、28日の昼、突然、決裂に終わった。

27日に振りまいた笑顔と打って変わって、トランプ大統領は28日午後、険しい顔つきで「北朝鮮が制裁の全面解除を求めてきたので、それに応じることはできなかった」という趣旨の説明を記者団にした。北朝鮮側は寧辺(ヨンビョン)の核施設の完全放棄だけを条件に制裁の全面解除を求めてきたので、応じるべきではないと判断したとのこと。

それに対して北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相は、28日から3月1日にかけての深夜1時頃会見を開き「北朝鮮は制裁の全面解除など求めていない」「求めたのは一部解除だ」と反論した。

李外相によれば、「北朝鮮は米国の査察の下で寧辺核施設の完全廃棄を提案したが、これは米朝間の信頼の程度を考えると、現段階では北朝鮮ができ得る最大級の非核化措置である」という。そして制裁解除に関しては、「北朝鮮が解除を求めたのは、あくまでも国連安全保障理事会が2016~17年に採択した決議による制裁のうち民生分野の一部だ」と説明した。すなわち、民間の経済と北朝鮮国民の暮らしを妨げている制裁のみを解除するよう求めた。さらに北朝鮮側は「核実験と長距離ミサイル発射実験を永久に中止すると文書で確約する用意があることも提案した」と明らかにした。ところがアメリカは、「寧辺廃棄以外にもう一つ廃棄すべだとして、最後まで譲らなかった」と、李外相は主張している。

ここで言う「もう一つ」とは何かというと、おそらく昨年のシンガポール米朝首脳会談の前(5月)に出されたアメリカの「科学国際安保研究所(ISIS)」の報告書で明らかにされた「カンソン(KangSong)(降仙)発電所」にあるという第2の秘密ウラン濃縮施設を指しているのではないかと思われる。 カンソンのウラン濃縮施設は、寧辺の2倍のウラン濃縮能力を持つと言われている。

具体的な核施設名は明示しなかったものの、たしかにトランプ大統領は28日午後の記者会見で、「北朝鮮は、われわれ(アメリカ)が知っていることに驚いていた」と述べている。

この「もう一つ」の核施設名は、28日の拡大会議が始まった時に、アメリカ側が突如提起したのではないかと推測される。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

S&P500の来年末目標は7700、AIが依然主要

ワールド

メキシコ、米国産豚肉を反ダンピング・反補助金調査

ワールド

トランプ氏、フェンタニルを「大量破壊兵器」に指定 

ワールド

米、英との技術協定を一時停止か 貿易分野でも譲歩要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 7
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 8
    「職場での閲覧には注意」一糸まとわぬ姿で鼠蹊部(…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中