最新記事

航空機

737MAX、修正プログラム完成でも運行再開は見通せず 米国主導の認証制度に変化も

2019年3月29日(金)12時36分

737MAXの認証審査を巡って米航空当局には厳しい目が注がれている。737MAXの機種部分。3月27日、米ワシントン州レントンにあるボーイング社の工場で撮影(2019年  ロイター/Lindsey Wasson)

米ボーイングのエンジニアがノートパソコンとUSBメモリーを手に取り組めば、737MAX型機の失速防止装置のソフトウエアにパッチ(修正プログラム)を当てる作業はものの1時間で完了する。ここまでは簡単だ。

だが、ボーイングの次期主力機737MAXが飛行を再開するには、米連邦航空局(FAA)のほか、2度の墜落事故を受けて運航停止を命じた各国の航空当局から、この修正プログラムの承認を受けなければならない。

中国や欧州、カナダの航空当局は、飛行再開に当たってFAAの判断をそのまま受け入れることはせず、独自の検証を行う構えだ。

737MAXの認証審査を巡ってFAAには厳しい目が注がれている。各国の航空当局が空の安全におけるFAAのリーダーシップに異を唱えていることもあり、飛行再開までに数カ月かかる可能性もある。

「この問題は、7月か8月まで片が付かないだろう」。ボーイングの株主でもあるフォート・スミス・キャピタル・グループの最高投資責任者、チャーリー・スミス氏はこう予測する。

世界最大の航空機メーカーであるボーイングは、昨年10月のインドネシアのライオン航空機墜落事故を受けて、失速を防止する制御ソフト「MCAS」のアップグレードに取り組んできた。この事故は、ソフトが機首を下げ続け、操縦士がそれを修正できなかったことが原因とみられている。

27日の上院公聴会に出席したFAAのエルウェル長官代行は、事前に提出した証言原稿で、「FAAによる事実やデータの分析がそれを適当と認めるまで」737MAX型機の飛行再開を認めない方針を示した。

それによると、ボーイングがMCASソフトウェアの修正案をFAAに正式に提出し承認を求めたのは、1月21日だった。

承認を前に、FAAはMCASソフトウェアの見直しに「直接関与」していたが、「時間の経過とともに、継続的な分析と改善に資するデータが出てきた」という。

客室内の通路が1本の「ナローボディ」であるこの新型機は、10日にエチオピア航空機が墜落し、昨年10月のライオン航空機事故との類似性が指摘され、世界的に運航が停止された。

運航と納入の再開に向けた第一歩として、ボーイングは200社超の航空会社と各国当局に対し、ソフトウエアや訓練の詳細情報を提供する方針だ。

ひとたび修正プログラムが承認を受ければ、作業自体は1機当たり1時間もあれば済むと、FAA関係者は言う。だが作業全体としては、さらに長い時間が必要になる可能性がある。

FAAとボーイングは、機能上の異常事象を抽出し、機体に与える影響を検証する作業を含め、分析の一部をやり直す必要がある。すでに認証を受けたシステムに変更を加えるためだ。

パッチを当てた後は、地上試験と飛行試験が行われるが、必要となる期間には幅がありそうだ。

「もちろん飛行再開を求められているが、同時に、承認は適切に行わなければならないというプレッシャーも大きい」と、前出のFAA関係者は話す。

「事を急いて、後で問題が出てくるような事態は絶対に避けなければならない」

ボーイングとFAAは、コメントの求めに応じなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪経済見通し、現時点でバランス取れている=中銀総裁

ワールド

原油先物横ばい、前日の上昇維持 ロシア製油所攻撃受

ワールド

クックFRB理事の解任認めず、米控訴裁が地裁判断支

ワールド

スウェーデン防衛費、対GDP比2.8%に拡大へ 2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中