最新記事

事件

許せない! オランウータン母子襲われ子は栄養失調死、親は銃弾74発受け重傷

2019年3月14日(木)22時40分
大塚智彦(PanAsiaNews)

保護されたオランウータン母子、だが子供の方は助からなかった。
 

絶滅の危機に瀕しているオランウータンを巡ってはインドネシアが生息地域周辺を保護地区に指定して密猟を厳しく禁止している。しかしその一方で森林火災やジャングルの開発でえさが不足したり、エコシステムが破壊されたりして、農園や村落などの居住地近くまで現れることもあり、被害を心配する住民が殺害したり怪我を負わせたりする事件も報告されている。

2018年1月には中カリマンタン州南バリト県で自宅敷地内に侵入したとして住民がオランウータンを射殺する事件も起きている。さらに2018年2月には東カリマンタン州東クタイ県でパイナップル畑やパーム油農園を荒らしたとして農民が空気銃で130発をオランウータンに発射し殺害。農民4人が自然保護法違反などで逮捕されている。

特別な収容施設で治療と保護

アチェ州自然保護庁関係者は環境庁の法律専門家などのチームと今回のオランウータン襲撃事件について調査を開始している。さらに地元警察と協力して空気銃所持に関しても捜査している。

インドネシアでは銃などの武器を市民が所持することは一般的には違法とされているが、空気銃は対象外といわれほとんど野放し状態という。特に山間部やジャングルなどで作業する労働者が野生動物などに襲われることなどを警戒して、あるいはかつては政治家や急進派イスラム教指導者などが護身用に所持しているケースもあった。

保護された母親のオランウータンは空気銃の弾で両方の目にかなりの重傷を負っていたことから、獣医師らの判断で両目の摘出手術が行われたという。この母親は今後、人間に飼育され自然に戻ることが困難になったオランウータンなどの収容施設に移送される予定という。

インドネシアにはこうした野生のオランウータンを保護して、自らエサを獲る訓練などを経て野生に戻す「リハビリセンター」がスマトラ島やカリマンタン島に複数存在している。しかし子供のときに密猟、密売されて長年ペットなどとして飼育されたオランウータンを野生に戻すことは難しいとされ、施設には多くのオランウータンが残り、飼育されているのが現状だ。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アンソロピックが追加サービス公表、外部主要ソフトと

ワールド

米政権、10%の代替関税発動 15%への引き上げ方

ワールド

アンソロピック、AI軍事利用の制限緩和しない意向=

ワールド

米国務省、ロシア攻撃で米の利益損なわないよう警告 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 5
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 8
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 9
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 10
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中