最新記事

自動車

米国、高級ピックアップトラックが好調 ビッグスリー雇用の命綱に

2019年2月11日(月)14時09分

米国での自動車需要が低下するとしても、米ビッグスリーは大型化・高級化の進むピックアップトラックを買い続けてくれる顧客に期待を寄せている。写真は4日、テキサス州ディケーターで、ミッキー・マクマスターさんと、彼の12台目となる新しいピックアップトラック「GMCデナリ」(2019年 ロイター/Nick Carey)

ミッキー・マクマスターさんが乗っているのは、彼にとって12台目となるピックアップトラックだ。

テキサス州ディケーターで農業機器を販売する61歳のマクマスターさんは2週間前、長いこと働き続けた自分へのご褒美に、2019年型「GMCデナリ」を約6万9000ドル(約760万円)で購入した。

「私にとって、これはピックアップ版キャデラックだ。まぎれもなく高級車だ」とマクマスターさんは言う。「私はこういう車を買えるようになるまで働いてきた。この車は、私がこれだけ稼いできたのだと示してくれる」

ゼネラルモーターズ(GM)はミシガン州フリントの工場で同社として最も大型の新世代ピックアップを生産するため、新たに1000人の採用を計画している。同社が当てにしているのが、マクマスターさんのようなタイプの顧客だ。

テキサスなど米中部各州における大型ピックアップに対する需要は、米最大手の自動車メーカーであるGMが他地域の工場でレイオフの対象としている多くの労働者にとって頼みの綱となっている。

ほとんどのアナリストの予想通り、米国での今年の自動車需要が全体として低下するとしても、米国自動車産業のビッグスリー、そして各社の国内従業員数千人は、マクマスターさんのような顧客が大型化・高級化の進むピックアップを買い続けてくれることを期待している。

フリント工場でGMが生産しようとしているのは、大型ピックアップの新型「シボレー・シルバラード」と「GMCシエラ」であり、その中には、世界で最も利益率の高い車種に数えられる高級仕様車も含まれている。

GM、フォード・モーター、そしてフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の商用車部門「ラム」はこのセグメントの車種を独自に生産しており、各社とも、今年投入する新型、あるいはモデルチェンジする車種に後にひけない勝負を出ている。

業界のデータによれば、大型ピックアップトラックの米国における販売台数は、2013年以降で20%以上も伸び、年間60万台以上に達している。高級仕様車の価格は7万ドルを優に超える。

GMでは5日、ミシガン州フリント工場で、「シボレー」「GMC」ブランドでの新世代ピックアップの生産開始を華々しくスタートさせる。GMによる大型ピックアップトラックの生産は、現在すべてフリント工場に集約されている。

GMは国内で従業員数千人のレイオフを進め、北米工場5カ所を閉鎖する計画を立てているが、その一方で、フリント工場では雇用を増やしている。同工場は1日3交代制で週6日操業している。マイク・ペレズ工場長はロイターに対し、「新車種の組立システムの拡大によって、生産能力は25%以上増大する」と語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

LSEG、第1四半期契約の伸び鈍化も安定予想 MS

ビジネス

独消費者信頼感指数、5月は3カ月連続改善 所得見通

ワールド

バイデン大統領、マイクロンへの補助金発表へ 最大6

ワールド

米国務長官、上海市トップと会談 「公平な競争の場を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中